消費財メーカーの営業力を強化するヒントをお伝えしてきた本コラム、4回目です。
シリーズ構成
- 第1回:採用率を高める提案ストーリー ポイントは「得意先目線で整理する」
- 第2回:営業現場でのデータ活用の目的と現状
- 第3回:キーアカウントマネジメント、JBPの進め方
- 第4回:営業マネージャーの戦略立案とチームマネジメント ←今回
テーマは「営業マネージャーの戦略立案とチームマネジメント」です。
前回までお伝えしてきた、キーアカウントマネジメント(KAM)やJBP、データ活用、提案ストーリーの考え方、これらを機能させるためには、マネージャーの動き方にかかっているといえます。
―― 「戦略を立てても現場で浸透しない」、「うちのメンバーはなかなか動いてくれない」
このような声を現場ではよくお聞きします。メンバーに対するコメントとなっていますが、よくよく状況を確認すると、マネージャー自身が「自分の役割は何か」を十分に言語化できていないケースが、実は少なくないようです。
■ 営業マネージャーに求められる「3つの仕事」
当社が消費財メーカーの方100人に実施したアンケートにおいて、「営業マネージャーに期待すること」のトップ3は以下の結果でした。
1位:重点小売業との関係深耕(57.0%)
2位:部門メンバーのスキル強化・育成(54.4%)
3位:戦略の検討・推進(38.6%)
注目いただきたいことは、この3つが独立したものではなく、実はすべてつながっているという点です。
重点小売業との関係を深めるには、自身を含めたメンバーの高いスキルが必要です。メンバーが正しく動くためには、マネージャーが明確な戦略を持ち、方向性を示す必要があります。つまり、戦略立案はすべての土台といえます。
■ マネージャーあるある――「本部の戦略=自分の戦略」になっていませんか?
ここで、現場でよく見かける「落とし穴」をひとつ正直にお伝えします。
多くの営業マネージャーが、本部や上層部から下りてきた全社的なマスタープラン(営業戦略・ブランド戦略)を、そのまま「自分の部門の戦略」として現場に伝えてしまっていることがあります。
「今期は○○ブランドを重点的に」「新商品のフェイス数を確保せよ」
――これらはもちろん重要な指針です。しかし、それはあくまでも"本部の意図"であって、現場の戦略ではありません。
なぜかというと、マスタープランは全国の営業組織に向けて作られたものだからです。北海道のエリアと九州のエリアでは、強い小売業も、競合の状況も、自社商品のシェアも、まったく違います。担当する得意先の数や規模も違えば、メンバーのスキルレベルも違いますよね。
それにもかかわらず、「本部からこう言われているから」とマスタープランをそのまま現場に降ろすだけでは、メンバーは「なぜこれをやるのか」が腹落ちしないまま動くことになります。結果として、活動が表面的になり、得意先への提案も深みを欠いてしまいます。
営業マネージャーの本来の仕事は、マスタープランの意図を理解した上で、「自分のエリア・自分の得意先・自分のチーム」という具体的な文脈に落とし込む――本部の戦略を"翻訳"することです。これが、現場に機能する戦略を生み出すための出発点といえます。
では、現場で使える戦略立案のプロセスとはどういうものか。大きく4つのステップで整理します。
■ 戦略立案の4ステップ
・ステップ1:「現状把握」─数字と現場の両方を見る
まず陥りがちなのが、売上高の高い企業だけを見て戦略を考えてしまうことです。
もちろん売上高も大切ですが、利益率・伸び率・競合との比較・自社との関係性の深さなど、複数の軸で得意先を評価する必要があります。これらに加えて重要なのは、数字だけでなく「得意先との関係性」も情報として扱うことです。
さらに重要なのは、数字だけでなく「得意先との関係性」も情報として扱うことです。メンバーが得意先でどんな会話をしているか、バイヤーが今何に困っているか、競合がどんな動きをしているか――こうした定性情報が、戦略の解像度を大きく上げます。
「情報が揃ったら考えよう」では永遠に動き出せません。今ある情報で仮説を立てて動き始め、不足している情報は動きながら集めるという姿勢が大切です。
・ステップ2:「課題設定」――すべてに注力しない勇気
限られたリソースの中で成果を出すためには、重点先を絞る判断が欠かせません。
ステップ1の現状把握をもとに、得意先を「伸ばすべき先」「守るべき先」「今期は最小限の対応でよい先」に仕分けをする。そうして、どこに特に注力して活動していくことが良いのかを判断します。これが明確であるかどうかが、戦略の実現度を決定的に分けます。
また、ここでもう一度、マスタープランとの関係を考えてみてください。本部が「重点ブランドA」と打ち出していたとしても、自分のエリアの主力チェーンがそのブランドとの相性が悪ければ、別のアプローチが必要かもしれません。
本部の優先順位と現場の優先順位を、自分の頭で整合させて判断することがマネージャーに求められる業務となります。
・ステップ3:「アクションへの落とし込み」――戦略を行動に変える
戦略は具体的な活動に落とし込んで初めて、現場で機能します。
「重点チェーンAとのJBPを第2四半期中に始動させる」「担当者Bの提案スキル強化のため、月2回の同行訪問を実施する」など、誰が・何を・いつまでにという形で明確にすることが大切です。
また、メンバーへの伝え方も重要です。「こうしろ」という指示だけでなく、「なぜこの得意先を優先するのか」「何を目指してこのアクションをするのか」という背景を伝えることで、メンバーの納得感と自発性が生まれます。どうやって実現していくのかを背景からアクションまで、明確にすることがポイントになります。
・ステップ4:「仮説と検証のサイクル」――動きながら精度を高める
戦略やアクションは最初から完璧である必要はありません。
大事なのは、仮説を持って動き、結果を見て修正するサイクルを回し続けることです。「何が違っていたのか」が分かれば、次の仮説の精度は確実に上がります。このサイクルを組織として回せるようになることが、営業チームの「学習する力」「成長する力」となっていきます。
検証して次につなげることで、戦略やアクションの精度を高めることにつながります。![]()
■ チームマネジメント――「管理」から「育成」へ
戦略が固まったら、次はそれをチームで実行する段階です。ここで多くのマネージャーがつまずくのが、「管理」と「育成」を混同してしまうことです。
数字の進捗を確認することは管理です。メンバーが「なぜこの数字になっているのか」を自分で考え、次の行動を自分で決められるようになるように支援するのが育成です。この違いを認識できているマネージャーは、意外と少ないように見受けられます。
また、よくある落とし穴は、「自分でやってしまった方が早い」という思考です。
優秀なプレイヤーだったマネージャーほど、メンバーの提案を自分で直してしまったり、商談に同行して自分が話してしまったりします。短期的には成果が出るかもしれませんが、これではメンバーは一向に育ちません。チームの成長を止めているのが、実は自分だった――というのは、現場でよく起きていることです。
もうひとつ、見落とされがちな落とし穴が「売上だけを追いかけるマイクロマネジメント」です。
売上目標が重要なのはもちろんです。ただ、売上という結果だけを管理していると、「数字が足りない、どうするんだ」という会話が毎週繰り返されるだけになります。
メンバーは数字のプレッシャーに追われ、目先の対応に終始してしまい、提案の質や得意先との関係構築といった中長期的な活動が後回しになっていきます。
本来、マネージャーが管理すべきはプロセスです。提案件数・採用率・訪問の質・バイヤーとの関係深度など、売上につながる行動指標(プロセスKPI)を設定し、そこを見ることで、メンバーが「何をすれば結果が出るのか」を理解して動けるようになります。
結果だけを見て詰めるのではなく、プロセスを見て育てる――この視点の転換が、チームの底上げに直結します。
育成で意識したいのは、「問いかけ」を中心としたコーチングのスタンスです。「なぜそうしたの?」「次はどうすると思う?」という対話を積み重ねることで、メンバー自身が考える習慣が生まれます。答えを与えるのではなく、考えさせる。この積み重ねが、マネージャーが現場にいなくても動けるチームをつくります。
■今回のまとめ 現場の指揮官に「地図」と「羅針盤」を
4回にわたってお伝えしてきたこのコラムシリーズのテーマは、一貫して「現場で使える営業力の強化」でした。
優れた提案ストーリー、データの活用、得意先との関係深耕――これらはすべて、現場の指揮官であるマネージャーが正しく機能することで、初めて組織全体に広がります。
本部の戦略を現場に"翻訳"し、メンバーが腹落ちして動ける状態をつくる。そして、メンバーの自走力を育てながら、組織の知見を蓄積していく。そういった「地図と羅針盤を持つマネージャー」が増えることが、消費財メーカーの営業組織が本当の意味で強くなるための、一番の近道だと私たちは考えています。
このようなスキルを強化するプログラムは下記をご参照ください。
https://www.marken.co.jp/consulting/2022/03/manegement.php
また、現在弊社では、営業メンバーの活動状況の見える化を進めるアセスメントもご用意しています。
ご興味のある方はぜひお問い合わせください
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全4回でお伝えしてきた今回のコラムはここまでとなります。
営業部門の強化にお役立ていただけるととても嬉しく感じます。
今後も、「消費財メーカー様の営業強化」にお役立ちいただける内容についてコラムを整理していきますので、
また機会を作ってお届けしたいと考えています。
これからも、マーケティング研究協会トレードマーケティング部をよろしくお願いいたします。
筆者
