ここ数年で、小売業を取り巻く環境はかなり変わってきました。
M&Aによる大規模化・寡占化による競争の激化、リテールメディア等により、小売業が自ら顧客データを活用してメーカーに提案を求める構図も生まれてきました。
みなさんも感じていると思いますが、得意先が持っている情報量は、以前とは比べ物にならないレベルになっています。
こうした環境の変化は、メーカー営業に求められるスタンスそのものを大きく変えています。
かつてのように「良い商品を提案すれば売れる」という時代はとうに終わり、今、メーカーの営業に求められているのは、その小売業・店舗で商品を買ってもらい、買い続けてくれるロイヤルティの高いお客様を、得意先とともに創っていくという発想です。
これは、単なる提案力の話ではありません。
データをどう活用するか、得意先との関係をどう深めるか、チームとしての戦略をどう描くか
──営業活動全体のあり方が問われています。
実際に様々なメーカーで「今後の営業組織がどうあるべきか」「どのように営業変革をすすめるか」という議論も活発にされています。
しかしながら、そのような状況においても、営業の現場では、「この商品を採用してください!」という"お願い商談"がまだまだ多いように見受けられます。
御社の営業の現場では、いかがでしょうか。
「提案してもなかなか採用されない」
「バイヤーの反応がいまひとつ」
「決まったはずなのに、全然発注が上がって来ない...」
といった声が上がっていないでしょうか?
もしそういうことがあるようでしたら、このシリーズはきっとヒントになるはずです。
このシリーズでは全4回にわたり、そうした課題に対して現場で使える考え方とアプローチをお伝えします。
第1回は、提案の根幹となる「提案ストーリー」について取り上げます。
シリーズ構成
- 第1回:採用率を高める提案ストーリー ポイントは「得意先目線で整理する」
- 第2回:営業現場でのデータ活用の目的と現状
- 第3回:キーアカウントマネジメント、JBPの進め方
- 第4回:営業マネージャーの戦略立案とチームマネジメント
■ そもそも「提案」とは何か
みなさんも「提案ストーリー」という言葉を今まで以上に耳にする機会があるのではないでしょうか。
「提案」とは単に「聞きやすいように順序よく情報を並べること」ではありません。
大切なのは、得意先の小売業が今どこにいて(=今、どのような状況か)、何を目指していて、何が課題なのかという背景をしっかり踏まえた上で、自社の提案がその背景にどう応えられるのか、解決できるのかを示すことです。
自社のトピックとして、
「この商品は市場シェアNo.1です」
「消費者調査でも高評価でした」
「新しいフレーバーは今SNSで話題の〇〇で、、」
──こうした情報をお伝えすることはもちろん間違ってはいませんが、それだけでは自社都合だけでしかなく一方的に伝えたい単なるデータと情報の羅列です。
「提案」は得意先の目標や課題と結びついてはじめて、機能します。
■ 得意先目線で提案ストーリーを考えるとは、具体的にどうしたらいいの?
では、具体的に何を理解すれば「提案ストーリー」ができるのか。
ポイントはとてもシンプルです。以下の2点を起点にすることが出来れば問題ありません。
① 得意先の目指す姿:カテゴリー戦略、ターゲット顧客層、など達成すべきこと
② 得意先の現状:現在の進捗
この2点を理解し、乖離(Gap)を明確にすることが、提案の出発点になります。
例えば、得意先小売業の方針では「ヤングファミリー層の獲得」を重点戦略に掲げているのに、現状の売場を見てみると品揃えが「シニア向け」に偏っていたとします。
そこには明確なGapがありますよね。
この状況認識をバイヤーと共有した上で「このGapを埋めるための品揃え提案」として展開すれば、提案は「売り込み」ではなく「問題解決の提案」として受け取られます。
バイヤーがすでに問題意識を持っている場合もありますし、データなどを見せることではじめて気づされる場合もあります。
どちらにせよ、「だから、この提案が必要なのです」という論理の流れが成立したとき、採用率は明らかに変わってくるはずです。
「得意先ごとに提案を変えているつもりなのに、どこか響かない、刺さり切らない」という感覚がある方は、この「Gapをスタートにする」という視点が、突破口になるかもしれません。
──まとめ
提案ストーリーは、「ストーリーの流れがきちんとしているか」という問題ではありません。
得意先のことをどれだけ理解しているか、生じている問題やこれから取組に対して、仮説をもって考えられるか、それに尽きます。
現場で成果を出している営業担当の方に共通していることは、得意先の方針や目標と現状をしっかり把握した上で、自社の製品を活用して、得意先や担当カテゴリーの課題解決に向けた提案ができる力を持っていることです。
このスキルは、インプットと実践を繰り返すことで確実に身につきます。
次回は、提案の説得力をさらに高める「データ活用」について取り上げます。ぜひお読みください!
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マーケティング研究協会トレードマーケティング部では、 本コラム「提案ストーリーの強化」に関する研修プログラムは下記ご参照ください。 |
筆者
