消費財メーカー様の営業力強化に役立つ内容を、マーケティング研究協会トレードマーケティング部が配信している本コラム。
前回は「営業プランニングスキル:情報収集/仮説立案・課題抽出/提案内容の検討」の強化ポイントについて、お伝えいたしました。
第4回の今回は「営業実践スキル:データ分析・提案活用/店頭実現/実践検証/提案資料作成/プレゼン・交渉」の強化ポイントについてお伝えしていきます。
- 第1回 営業スキル強化:
どんなスキルが必要か?大きく3つに分けられる」 - 第2回 営業ベース知識・スキル編:
提案営業の基本/小売業・業態理解/売場理論/消費者・ショッパー行動理解 - 第3回 営業プランニングスキル編:
情報収集/仮説立案・課題抽出/提案内容の検討 - 第4回 営業実践スキル編:
データ分析・提案活用/店頭実現/実践検証/提案資料作成/プレゼン・交渉 - 第5回 営業力強化:
スキル強化の進め方のポイント
必要なスキルを強化するためのポイントについて、お伝えしていきます。
■営業実践スキルとは?!
提案を効果的にバイヤーに伝え、採用してもらいやすくするために必要となるスキルです。
例えば、データ分析・提案活用スキルは、市場・POSデータの分析を通じ、数字面から得意先(小売業)の方針と現状のGAPを見つけるためのスキルと考えることが出来、バイヤーに根拠をもって納得いただくために必要になります。
また、店頭実現スキルは、得意先の売場の状況、オペレーションの仕組みなどを理解した上で、自分の提案内容をどう具現化、実現化するのかということに必要になります。
加えて、実践検証スキルは、提案内容について得意先とPDCAを回し、課題抽出~提案、実践内容をレベルアップするために必要なスキルです。
その他、提案資料の作成やプレゼン・交渉スキルも重要なスキルとなっています。
■営業実践スキル①「データ分析・提案活用スキル」の強化ポイント
ここで重要なことは、データ分析で見つけた事実に解釈を加えるということです。
例えば、自社商品のPOSの状況が前期比104%だったとします。そこで、ただ単純に「自社商品は前年超えをすることができました」では、ただの報告となり、「そんなことはデータを見ればわかる」と言われてしまいます。
そうではなく、
「前年超えの理由としては、トレンドに合わせた施策が奏功したことが理由と考えられます。なお、このトレンドは来年はこうなりそうです」
というように、事実に加え、その根拠や解釈、さらには今後の見通しについてもお伝えをすることが重要だということです。
この際に自社商品について「だけ」をお伝えする方をよく見かけますが、バイヤーは特定のメーカーや商品ではなく、カテゴリー全体を管理しています。
カテゴリー全体について言及することを忘れないようにしたいところです。
また、POS分析で良く実施される手法として、市場vsPOSでGAPを見つける方法があります。
一般的な方法ではありますが、単純に市場GAPを見つけて、それを埋めるための提案が本当に良いのかを確認することも重要です。
市場とのGAPを埋める提案というのは、「売り逃し」を明確にするために重要な視点ですが、得意先も様々な事情や戦略を取った結果、その数字(POSデータ)になっています。
単純に市場と比べていくだけだと「目指すのは市場」ということになり、企業の方針や特色は何も加味されないことになってしまいます。
例えば、人口減少エリアで展開するチェーンに対し、「データを見る限り、御社はニューファミリーの需要を取れていないかもしれません。だから、ニューファミリー向けのこのアイテムを是非導入してください」といっても、「うちのエリアはニューファミリーは少なく、注力ターゲットはシニアで、シニア層の囲い込みを方針に掲げているからこの数字になっているんだ」ということも可能性はゼロではありません。
つまり、「事実に解釈を加える」、さらに「相手の方針との合致度を確認する」ことが重要になります。
■営業実践スキル②「店頭実現スキル」の強化ポイント
ここで重要なことは、「本当に実現できるのか」ということです。
提案した施策の実現にはどのくらいのオペレーションが必要になるのか、それは、得意先が実施してくれるのか、自社がラウンダーなどを活用しないといけないのかなどといったことを把握した上で、実現可能な施策を提案することが重要です。
小売業にお願いすることを過度に遠慮される方を見かける機会も多いですが、バイヤーも本当に自社のカテゴリーに貢献できることだと納得してくれれば、必ず協力をしてくれます。
卸も含め「役割分担」をしながら、実現可能な提案をしていきたいですね。
また、売場のどこに、どうやって陳列してもらうか、といった展開イメージや差替え対象のアイテムを明示することも重要になります。
更には、複数のパターンで展開している得意先については、パターン別の陳列場所も提示していくことが、採用率、店頭実現率を向上させる大きな要素になってきます。
■■営業実践スキル③「実践検証スキル」の強化ポイント
このスキルは、得意先に「本当にうちのことを考えてくれている」と思ってもらい、次の提案につなげていくために、とても大切なスキルです。
私たちが2021年に小売業の方200名に聞いたアンケートにおいて、「消費財メーカーの営業活動として重要視している内容」として、「結果の検証」を重要だと回答された方が全体の約7割にも達しました。一方で、この点について満足しているかと聞くと、3割以上が満足していないと回答されました。
これは、「採用してもらえたら、おしまい」と考える消費財メーカーの営業担当者の方がまだまだ多いことを示しているのではないかと私たちは考えています。
導入商品の1か月後、2か月後の進捗についても検証・報告をしながら、状況に応じて改善策を提案・実行し、結果として半期・通期の検証ができれば、信頼を勝ち取ることにつながります。
また、検証結果を次の提案に結び付けていければ、現状の問題についての認識を共通のものとし、その解決に向けてともに取り組むパートナー的な関係を築いていくことができます。
例:「御社が重視するニューファミリーについて、こんな施策をさせていただきました。結果は○○でした。この結果を踏まえ、来期は~~を実施させていただきたいと考えています」
ともすれば見落とされがちなスキルですが、採用率を左右する非常に重要な内容だということがご理解いただけたのではないでしょうか。
さて、次回は本シリーズコラムの最終回として「スキル強化の進め方のポイント」についてお伝えいたします。
筆者