■データを使った提案の重要性
小売業との商談において、データを活用した提案を行うことはとても大切です。
個人の印象や感想ではなく、事実としての数字を元に認識を共有する、解決策を提示するというステップを踏むことで、提案の説得力が格段に高まります。
登場人物のご紹介
本コラムの主人公、江藤さんが所属している「MK食品株式会社」のメンバーや、取引先の「TMスーパー」のバイヤーさんなどをご紹介。
カテゴリー市場シェア3位メーカー。バイヤーと直接商談できる得意先は多い。
- 江藤さん(営業担当)
- 前任の急な退職により、急遽TMスーパーの本部担当に抜擢
- 塚田さん(課長)
- 江藤さんの上司で、元エース営業担当
現在は担当先を持たずマネジメントに専念
- 鈴本さん(営業担当)
- MK食品の新入社員
- 椎谷さん
- 頼れる本部スタッフ、のちのち登場予定
関東を中心に伸び盛りなスーパー
SM業界TOP5も見えてきたところ
- 片岡さん(バイヤー)
- MK食品を含むカテゴリーに新しく着任
「前任よりも実績を出していきたい」とやる気満々
■データを使ってお客様を語れるようになろう
提案に向けて着々と準備を進めている江藤さんですが、営業推進部からの資料を眺めながら難しい顔をしています。
【MK食品 量販営業部オフィス】
営業推進部からいただいた市場データの資料を見ているんですが、こういうの苦手でして...。
慣れてしまえばそう難しいことじゃないよ。
今回は市場データが手元にあるわけなんだけど、市場データをバイヤーに提示して何がしたいんだ?
さらに言えば、カテゴリーの現状を踏まえて、今後どのような方向に向かっていくべきだと考えているか、カテゴリーの専門化でもあるメーカーとしての解決アイデアを提示することも忘れちゃいけない。
カテゴリーを語るうえで大切なのは「お客様がどう変化したか」だよ。
もう少し具体的に言うと、お客様の商品の使い方や使うシーン、選び方、買い方などがどう変化したか。
それが結果として数字に表れているんだから。
数字だけを伝えるよりも格段に説得力が増す。
そのためにデータを「並べる」「分ける」「比べる」ってことをするんだ。
例えば、過去5年分の売上のデータを順に並べて推移を見る、とかね。
「分ける」ってのは、データを分割すること。
細かく分けることで見えてくることがあるからね。
例えば、1年を12か月に、売上を数量と単価に分割したりね。
「比べる」ってのは、並べたり分けたりしたデータを見比べて、気になる変化を探っていくこと。
例えば、売上は伸びているのに数量は減っている、とか、サブカテゴリーAは伸長しているのに対してBは減少傾向、とかね。
でもここまではまだ数字の動きを見ているだけで、お客様の変化にはたどり着いていないですよね?
他のデータと重ね合わせてお客様の変化を捉えていくんだ。
うちもどういう商品をどんなシーンで使っているかとか、なんで買ったのかとか、過去と今とでどう変わったかをマーケティング部が毎年調査してる。
カテゴリーのプロであるメーカーの調査だから、専門性の高いデータ分析ができる。
生活するうえで何にどれくらいのお金を使っているかとか、買うものに対する価値観の変化とか、分析のヒントになる情報はたくさんある。
仮に会社から資料が出てても、その内容を自分で理解して語れるようにならないと、バイヤーに突っ込まれたときに切り返せないぞ。
片岡バイヤーの「このデータ、どういうことですか?」って突っ込みが頭をよぎりました...。
■本部商談奮闘記 今回のポイント
今回はデータ分析の基本的な考え方や進め方を、市場データを題材に解説してまいりました。
データ分析に苦手意識を持っていたり、時間がかかってしまったりと、お悩みの多い業務の代表例ではありますが、ぜひトライしてみてください。
- ★今回のポイント★
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- データ活用は小売業への提案に欠かせないものになっている
- データ分析のスタートは「並べる」「分ける」「比べる」
- 他のデータも活用してお客様の変化を捉え、解決アイデアを提示する
筆者