消費財メーカー様の営業力強化に役立つ内容を、マーケティング研究協会トレードマーケティング部が配信している本コラム。
前回までは主に消費財メーカーの営業研修の企画者、推進される事務局スタッフの方向けに「何を考え、どう進めるべきか」という内容について、私たちがこれまでにご支援させていただいた研修やコンサルティングの経験ともとに、全5回の内容でお伝えをいたしました。(前回までのシリーズはこちらから→ 小売業への営業力強化のススメ方<人材育成編1> )。
今回は、「営業スキルと強化の方法」について、次のような内容でお伝えしていきます。
- 第1回 営業スキル強化:
どんなスキルが必要か?大きく3つに分けられる」 - 第2回 営業ベース知識・スキル編:
提案営業の基本/小売業・業態理解/売場理論/消費者・ショッパー行動理解 - 第3回 営業プランニングスキル編:
情報収集/仮説立案・課題抽出/提案内容の検討 - 第4回 営業実践スキル編:
データ分析・提案活用/店頭実現/実践検証/提案資料作成/プレゼン・交渉 - 第5回 営業力強化:
スキル強化の進め方のポイント
必要なスキルを強化するためのポイントについて、お伝えしていきます。
■一番初めに考えるべきコト「理想としての営業の姿」
スキル強化を検討する前に、必ず明確にすべきことがあります。
それは、会社として目指す営業活動(姿)を明確にし、営業担当者にその内容を伝えることです。
目指す営業活動(姿)が無ければ、今、自分はどの状態にあるのか、何が出来ていて、何が出来ていないのかが曖昧になります。
曖昧なままスキル教育を実施しても、「何のために教育を受けているのか」が分からず、聞いておしまい、形だけやっておしまい、いうことにもなりかねません。
目指すべき姿を設定し、期待として明確に伝えることから始めるべきと私たちは考えています。
■目指してほしい姿が明確になったら、「活動内容を定義」し、「必要な知識・スキルの全体像」を整理する
「対小売業への営業活動として、必要と考えられるスキルには、どのようなものがあるでしょうか?」
この質問を投げかけると、「プレゼン力」や「POSデータの分析スキル」というようなお答えがよく返ってきます。
これらはもちろん、非常に重要かつ絶対に必要なスキルであると言えます。
しかし、ここで私たちがお伝えしたいのは、個別のスキルの前に、営業活動の全体像とその活動を推進するために必要な知識・スキルを整理する必要があるということです。
現に、私たちが消費財メーカー様の営業活動の実態について調査した結果によると、営業教育の問題と考えられることとして、「教育が体系的になっていない」ことが、毎回TOP3に入ってきます。
つまり、多くの消費財メーカー様がその時に必要なことを「場当たり的」に教育を実施していることを問題視されていると言えます。
「3年前にあの内容を実施したけど、以降やっていない」、「今はデジタル販促の提案スキルを高めなければ」などということが発生しているということが想像できますね。(「あ~、あるある」というようなお声が聞こえてきそうです)
では、スキルの全体像として、何を考えるべきでしょうか。
私たちは大きく次の3つに分け、それをさらに細分化して考えています。
- ベース知識・スキル:提案のための考え方や、提案をしていくために必要となる知識・スキル
- プランニングスキル:提案を形作るのに必要なスキル
- 実践スキル:実際に提案を行い、実現するために必要なスキル
※細分化した内容は第2回以降の内容でお伝えしていきます。
このように、全体を整理し、営業担当者の現状を把握し、優先順位をつけてスキル強化を進めることが項目のヌケモレを防ぎ、効率的に進める上で重要と言えます。
上記の3つの分類について、最近は特に「1.ベース知識・スキル」の強化が必要なケースが増えているように感じています。
得意先(小売業)の競争環境を理解していない、提案のために必要な行動を把握できていない、ということがよく発生し、提案そのもののスキル強化に進めないこともあります。
なお、これらの基礎的内容の強化が必要になってきている背景としては、次のようなことが考えられます。
- テレワークなどでメンバー間が顔を合わせる機会が減り、社内でのコミュニケーションや情報交換が減っている
- 営業活動に求められていることが変化しているので、教えられる先輩が少なくなっている
- これまでに、必要な知識を体系化されていなかった or 既存の教育が時代に合っていない
いずれにしても、「何を目指すか?」が明確になっていないと
現状がどのような状態で、どのようなスキル強化が必要なのか見えて来ないですね。
いかがでしたでしょうか。
営業力スキルの強化のために、まずは全体像をとらえ、現状を把握することからはじめないと、効率が低くなってしまう可能性について、ご理解いただけたのではないでしょうか。
次回は、「ベース知識・スキルにはどんな内容があり、どう強化するのか」についてお伝えいたします。
筆者