コラム

【トレードマーケティングTips】

営業現場でのデータ活用の目的と現状

マーケティング研究協会 トレードマーケティング部

2026.04.06.Mon.

前回は、得意先の目標と現状のGapを起点に提案ストーリーを組み立てることの重要性をお伝えしました。
今回はその提案を支える「データ活用」について取り上げます。

POS・ID-POS・市場データを営業で活用している方、現場への定着を推進したいマネージャー・営業スタッフの方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

シリーズ構成

  • 第1回:採用率を高める提案ストーリー ポイントは「得意先目線で整理する」
  • 第2回:営業現場でのデータ活用の目的と現状 ←今回
  • 第3回:キーアカウントマネジメント、JBPの進め方
  • 第4回:営業マネージャーの戦略立案とチームマネジメント

営業活動において、POSデータ・IDPOSデータ・市場データなど、様々なデータを活用できる環境が整ってきています。「提案書にデータを使用して商談する」こと自体はかなり浸透していて、当たり前のようになっていると思います。

ところが、データ活用に関する悩みは依然として多く、
「POSデータを分析したうえで提案をしているがバイヤーに刺さらない」
「分析に時間をかけているわりに、商談での反応が薄い」── こういった声は少なくありません。

その原因はどこにあるのか。

今回はその理由とデータを提案に活かすためのポイントを整理します。


■ そもそも提案でデータを活用する目的とは?

そもそも、営業におけるデータの役割とは何か

はじめに少し立ち止まって考えてみたいのですが、「データを使って提案する」 ──その目的、言語化できていますか?

「得意先に求められるから」「説得力が増すから」、もちろんこれは間違いではありませんが、さらにバイヤーの意思決定にそって考えてみましょう。

バイヤーが提案された内容に「GO」を出すとき、その判断軸はシンプルです。
「自社と自分が担当するカテゴリー(もちろんお客様にも)にとって良い提案か」ということです。

バイヤーにとってデータとは「メーカーの事情を聞かされるもの」ではなく、「自分の意思決定を助けてくれるもの」でなければ意味がありません。

つまり、データを活用した提案の真の目的は、得意先の意思決定を支援し、カテゴリー成長のパートナーとして認められること。
自社商品の売上拡大は、その結果としてついてくるものです。この順番、ぜひ意識してみてください。

営業スタッフの方にとっても考え方は同じです。
特定の企業の提案サポートをするのであれば、「分析した全国平均的な市場データを資料化し営業担当に渡す」ことで完結させるのではなく、「この得意先のバイヤーは今、何を知りたがっているか」を営業担当の方と一緒に考えながら分析を設計することが、提案の質をこれまでよりもさらに高めることにつながります。


■ よく見かける「データあるある」3つのパターン

では、提案の現場ではどんなことが起きているのか。よく見かけるパターンをいくつか挙げてみます。

1つ目は、得意先の目標を無視したデータです。
「当社製品の売上はこの期間で前年比105%でした!」
と報告しても、バイヤーが持っている目標が前年比110%なら、バイヤーから見ればそれは好調ではなく未達の話です。

「100%を超えているから良いだろう」ではなく、得意先がそのカテゴリーに何を求めているかを起点にデータを読む──これが基本中の基本です。

2つ目は、市場データとPOSデータのGAP分析に終始してしまうこと。
「御社のPOSデータ(売上実績)だと、このサブカテゴリーは前年比98%ですが、市場データ(全国平均)だと105%です。市場と7%のGAPが発生しています。市場並みに伸ばせるように、強化してきましょう!」 
というパターンです。

何が問題なのでしょうか?

バイヤーが一番聞きたいことは、「ところで市場と7%のGAPが発生した要因はなんなの?」ということと、「じゃあ、これからどうしたら良いの?」ということです。
市場と7%のGAPが発生した要因の分析をして、これまでに取り組んできたことが、うまくいっているのか、いないのか、という視点を入れていくことが必要です。

3つ目は、必要のない・薄い・得意先が興味のないデータを使ってしまうこと。
「提案にはデータを使わなきゃ」という認識は皆さん持っているかと思いますが、バイヤーが興味を示すかどうか、これが重要です。

例えば、九州エリアの地場チェーン小売業に、「全国全業態」の市場データを比較材料に持って行っても「ウチは九州のスーパーマーケット業態だから」と一蹴されてしまう、なんていうことは良く起こります。


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■3.データ活用で差をつける「仮説」

データ活用で差がつくのは、「データに向き合う前の仮説の質」です。提案の質を上げることにもつながります。
仮説とは、日常の中で見聞きした情報を自分の頭で咀嚼した結果です。

バイヤーとの会話、店頭での気づき、競合の動き、ID-POSから見えるショッパーの変化などから仮説は作られます。
「最近この売場で○○向け商品が増えているな。市場データでも同じトレンドが出ているのだろうか」
「バイヤーが気にしているあの課題、データでどう説明できるだろう」

こうした問いを持ってデータに向かうと、分析の深さも提案の説得力も、ぐっと変わります(作業スピードも上がります)。

また、仮説について、「段階」も整理しておくと良いと思います。

 仮説1→こんな数字が出てくるのではないか?という、数字の事実を見る前の仮説
 仮説2→なぜ、この数字が出てきたのか?という、要因に対する仮説
 仮説3→それでは、今後どのようなことをしていけば良いのか?という、解決策に対する仮説

仮説の精度は、日常の情報収集の質と直結しています。
営業担当の方と営業スタッフの方が「現場の気づき」を普段から共有し合えると、さらに精度は高まります。
現場感覚とデータ分析力の掛け合わせが、得意先に刺さる提案をつくります。

──今回(第2回)のまとめ

データ活用の目的を改めて整理してみます。


「得意先のカテゴリー課題をデータで可視化し、解決の方向性を示すこと。その結果として、自社商品の採用・拡大につなげること」

ここでひとつ、忘れないでほしいことがあります。データはあくまで「過去の事実の積み重ね」です。

何が売れたか、何が伸びなかったか――それを把握することはもちろん大切なことですが、データ活用の真価は「過去を説明すること」ではなく、「カテゴリーの課題を解決」し、さらに「これからのカテゴリーをどうつくっていくか」を描くために使うことにデータ活用の目的はあります。

得意先と一緒に未来のカテゴリーの姿を議論し、その根拠としてデータを使えるようになったとき、メーカーの営業担当の方は単なる「売り手」から「カテゴリーを共に育てるパートナー」へと変わります。
次回テーマのJBPにもつながる話ですが、そのベースにあるのは、やはりデータを活用した深い得意先理解です。

①得意先の方針・目標を起点に
②カテゴリー全体を視野に入れる
③仮説を持ってデータに向き合う

――この3点を日々の営業活動に組み込んでいくことが、「頼られるカテゴリーパートナー」への近道です。

明日から、なにかひとつだけでも試してみてください。
次の得意先訪問の前に、「このバイヤーは今、このカテゴリーで何を目指しているか」を確認してからデータを開く。
それだけで、見えるものが変わってくるはずです。

このようなスキルを強化するプログラムは下記をご参照ください。

https://www.marken.co.jp/consulting/2022/03/data.php

次回は、「キーアカウントマネジメント」「JBP」のポイントをお伝えします。これからを考える際にとても大切な内容ですので、ぜひまたお読みください。

筆者

マーケティング研究協会 トレードマーケティング部

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