1.はじめに
大好評!成長する業務用営業組織のつくり方の第2回は「自社の強みを生かし提案機会を見出す」です。自社の強みを客観的に把握し、強みを生かした営業活動を行うことが営業力強化の基本です。自社の強みを生かせないと「受注率が下がる」、「利益率が下がる」という悪循環が待っています。
今回は内田さんが前職でどうやって自社の強みをつくり、その強みを生かして成長してきたのかを、振り返っていただきます。食品メーカーの業務用営業部門で責任者、マネジャーを務められている方はぜひご一読ください。
2.後発で参入した調味料カテゴリー
入社当時の前職では畜産エキスへ事業を拡大していました。畜産エキス事業として最初に販路拡大先として設定としたのは食品メーカーです。食品メーカーは、商品を開発する過程で畜産エキス大量に消費するのです。
まず、食品メーカーの中でも畜産エキスの消費量が多い、即席麺メーカーをターゲットとして新規開拓営業を開始することになりました。
即席麺メーカーの研究・開発部門をリストアップして営業活動を行います。当時は飛び込みに近い形で営業活動だったのでアポイントが全く取れず本当に苦労しました。
そこで、他部門からの紹介を繰り返して目的の研究・開発部門に到達ことを目指しました。研究・開発部門に至る過程でアポイントが取れた関係者に深くヒアリングを行い、相手の業務や問題点を把握することを1人ずつ繰り返しました。そして、キーマンと出会えた際は信頼を得るため面談回数をいかに増やすかを考えて行動します。
相手との接触回数は信頼関係を築く上でとても重要なんです。
業務に必要な情報提供だけでなく、相手の趣味や出身地などのプライベートなことも深く探りどうにか接点を増やす可能性を探り続けたのです。
並行して即席麺メーカーの商品開発のスケジュールなどを把握し、自分たちの提案のタイミングを図ります。新規参入の場合、主力商品ではなく新商品やリニューアルのタイミングで新規原材料の提案が有効でした。1つずつ実績を積み重ねて取引量を拡大していくしか道はないんです。
これは今の時代でも変わらないはずです。
即席麺メーカーの市場をある程度獲得すると、家庭用調味料メーカーなど、他カテゴリーの食品メーカーへの営業活動へと販路拡大を続けます。即席麺メーカーと同様に新商品開発時やリニューアルのタイミングを把握して、新規原材料の取り扱いを提案していきました。
食品メーカーへ提案時のポイントは、原材料の品質は当然ながら、価格と安定供給も強く求められました。当時、畜産エキス用の新工場が立ち上がり、原材料を大量に、安く、安定的に生産・供給できることが強みとなり食品メーカーとの取引を拡大できました。
食品メーカーの市場をある程度開拓した段階で、次にターゲットとしたのは外食市場でした。
外食市場でも畜産エキスの消費量が多いラーメン店を最初のターゲットにします。ラーメン店はチェーンと個店がありますが、当時は圧倒的に個店が多かったためエリア毎に担当者を割り付けて1社ずつ間口を拡大していきます。
ラーメン店の店主・社長にはアポイントよりも飛び込め営業が活動の中心でした。
ランチ後~夕方の開店までの間に訪問する必要があったため、リストづくりと活動計画が重要です。
いかに効率よく訪問できるか活動計画をしっかり作り込みます。この経験が後の行動管理に役に立ちました。
ラーメン店市場の次はファミリーレストランです。
ファミリーレストランは当時すごく拡大している市場でした。ファミリーレストランはラーメン店と比較すると企業数が少なく、セントラルキッチンを備えていて購買部門があるなどとても組織化されていました。
営業活動も飛び込みではなく購買部門に訪問し、キーマンを発見する必要があります。
その企業やメニュー開発に関するさまざまな情報を収集しながら提案機会を探り、案件を獲得する。案件に対応した商品を開発し、プレゼンテーションと試食会を実施するという商談プロセスをたどる必要がありました。
ここでの経験が案件管理と社内の営業プロセスづくりと標準化に役立ちました。
ファミリーレストランでもグランドメニューではなく、季節のメニューから参入を図ります。
このあたりの営業活動には食品メーカーでの営業経験を生かすことが出来ました。
但し、これまでの経験を活かせないこともありました。
それは外食市場では食品メーカー異なり、原材料の供給ではなく原材料をブレンドした「完成スープ」の納品を求められたことでした。
完成スープを納品するという新しい試みでは、製造方法を構築・定着させることに苦労がありました。営業側でも納期や生産キャパシティの調整などこれまで経験したことがない交渉が求められます。こうした活動を通じて営業、開発、生産それぞれの部門でノウハウを構築したことが徐々に会社の強みとなったのです。
外食チェーン市場をある程度開拓した後に参入したのがコンビニエンス市場です。
コンビニエンス市場では、各チェーンに専用のデイリーメーカーがあり、そこで弁当・惣菜・調理麺などが製造されています。そこでまずデイリーメーカーから攻略するという目標を掲げます。
デイリーメーカーも組織化されているので、購買部門や商品開発部門に営業活動を実施します。コンビニエンス市場でもこれまでの経験を生かして調理面と弁当から参入を図ります。
コンビニエンスではフェアなどが頻繁にあり、商品の入れ替わりが激しい業態です。そのため当時は参入機会が多いと考えていたのですが、コンビニ市場はとても巨大で必要とされる物量がこれまでと桁違いでした。その上、急にカットされるなど当初は在庫管理に相当苦労しました。
問題点も多かったですが知恵を出し合って解決していきチェーンの要望に応えられる体制を整えるとチェーン本部での商談に呼ばれるようになります。
これまでデイリーメーカーを通じて把握していたチェーンの要望ですが、チェーン本部で商談するようになると格段に情報の鮮度が高くなります。本部商談を実施できる立場を生かして参入カテゴリーを徐々に拡大していきました。
ここまでを簡単に振り返ると
- 営業活動を通じて、営業プロセスづくりによる業務の標準化を図れた。
- 同様に行動管理や案件管理といった営業マネジメントの仕組み化を図った。
- 生産部門では、原材料の生産から加工度を増して完成スープを作れる体制を築いた。
- それに合わせて開発部門も完成スープを開発する体制を整えた。
このように、得意先の要望に応じる形で自分たちの業務のあり方を見直し、不足しているものを作り上げていったことが結果として強みとなり利益率を高めていった訳です。
皆さんも現業を維持するのではなく、他カテゴリーや他市場に果敢に挑戦し、その中で自分たちの強みを磨いていってほしいですね。
次回は営業活動をもう少し掘り下げて「キーマンを見つけ、人的ネットワークをつくる」
その上で「有効な商談を実施する」ということをお伝えしていきます。
次回もお楽しみに。
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筆者
マーケティング研究協会