1.はじめに
食料品の業務用市場は、コロナ禍で縮小した外食市場やコンビニエンスストア市場と急拡大したスーパーマーケット市場と業態によりさまざまな影響が生じました。
世の中がコロナ後となりつつある中で、縮小した市場も規模的には回復傾向にあります。とは言え、業態別、企業別に回復速度に差が生じるなど、コロナ以前と異なる様子がうかがえます。
こうした環境下で、今後も業務用市場で成長するためにどのような営業組織をつくればいいのでしょうか。
本コラムでは、営業利益率20%を実現したアリアケジャパン株式会社で常務取締役営業統括部長を務められた内田芳一さんとマーケティング研究協会の近藤の両名で業務用営業部門が今後も成長するために、どう変わり、何をする必要があるのかについて「持つべき意識」、「マネジメント」、「人材育成」の視点からの考察を連載していきます。
食品メーカーの業務用営業部門で責任者、マネジャーを務められている方はぜひご一読ください。
2.個人の裁量の幅が大きい業務用営業の世界
コンビニやスーパーで販売される家庭用商品の市場と異なり、業務用のビジネスでは完成品を販売するだけではなく、多くのケースで得意先と商品を作りあげていく必要があります。
家庭用のように商品企画部門やマーケティング部門が、商品設計やコミュニケーション、プロモーションを企画・実施してくれるのではなく、営業担当者自身が得意先の課題を発見し、課題を解決できる商品を企画開発し、販売、さらには量産、需給調整まで実施します。
元々業務用営業の世界にいる人からすると当たり前の事ですが、家庭用と比較した場合に業務用の業界では営業担当者が担うべき領域がとても広く、結果として家庭用の営業よりも個人の裁量が大きくなる傾向があります。
ここが業務用営業の醍醐味でもあるのですが、一方で属人的な営業に陥りやすいという問題を抱えています。属人的な営業組織の問題は、下図のように成績優秀者と未達成者に2分化された人員構成となってしまうという問題が生じます。
本来であれば業務を通じて得られた知見やノウハウが組織内で共有され営業全体が底上げされるべきところが、一部の優秀者個人の知見やノウハウとなってしまうことに起因していると考えられます。
現在のように市場が大きく変化し、得意先も変化に対応する中で、「変化への対応」を営業担当者個人に委ねてしまっていては今後の成長に不安を残しまいます。
今後は一部の成績優秀者に支えられている組織に決別し、すべての営業担当者が一定の質を保って成長する営業組織をつくる必要があります。
詳細は次回以降細かく説明していきますが、成長する営業組織をつくるポイントを3つ挙げます。
1つ目は【自社の強みを知る】です。
自社の強みというのは、生産設備や調達力などのハード面と開発人員やノウハウなどのソフト面の両方があります。得意先への提案では自社の強み以上のことは実施できません。
ところが、営業担当者だけでなく営業マネジャーも含めて自社の強みを客観的に把握して、その強みを生かした営業活動をしているケースは極少数といえます。
2つ目は「営業マネジメント」の強化です。
営業マネジメントの内容は多岐に渡りますが、特に重要なポイントは【案件管理】です。
「案件管理はウチもやってるよ」という声が多そうですが、皆さん得意先からいただく1つ1つの案件に目を通していますか?
営業担当者の持ち込み案件がいつまでも決定しないなんてことはないでしょうか?
営業マネジャーは、案件数(金額)の管理ではなく、各案件の進捗を管理する必要があります。得意先からいただいた案件は提案に向けて準備が進んでいるのか。試作品はいつ完成するのか。提案日はいつか。提案には誰が参加するのかなど1つ1つの案件についてしっかり首を突っ込んで個人の判断や裁量に委ね過ぎないようにする必要があります。
最後に3つ目の条件は「人材育成」です。
業務用営業では業態や企業ごとに営業の進め方が異なるため人材育成がとても難しく、自社の業務にフィットしたトレーニングをなかなか実施できないという苦労があります。
とはいえ、今の時代に「上司や先輩の背中を見て育て」では若手の定着率は目も当てられなくなります。トレーニングは商品知識、自社の生産設備・開発体制の理解、得意先及び得意先が属する業界の知識などとても多岐に渡ります。
今回は、特に重要なコミュニケーション能力について述べていきたいと思います。
業務用営業では、得意先の考え・方針を知り、得意先の問題を把握し、問題解決のための課題を設定します。
業務を通じて相手が感じていること、考えていること、望んでいることを類推することが求められます。これら一連のプロセスすべてで言語化能力が必要となります。
また、社外だけでなく商品開発や提案作成にあたっては他部署の関係者との対話や利害調整など社内でのコミュニケーション能力も求められます。
われわれは営業担当者のコミュニケーション能力は、組織での日々の会話の質が大きく影響していると考えています。日々の問いかけがメンバーの思考を促し、対話が言語化能力を鍛えるのです。
本コラムでは、こうした業務用営業に関するテーマについて内田さんのご経験に基づく知見とマーケティング研究協会が長年のコンサルティングで培ったノウハウを元に具体的にどうすればいいのかを解説してきます。
次回以降もお楽しみに
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筆者
マーケティング研究協会