コラム

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第4回 現場で使えるマニュアル作りに必要な2つの視点(事例から)

マーケティング研究協会

中村 佳美

2020.02.26.Wed.

第3回では、マニュアル作成に入る前に考えておきたい2つのポイント「育成計画」「いつ誰がどのように使うのか」に触れました。

(第3回現場で使えるマニュアル作りに必要な2つの視点)

第4回では、もう少しイメージが沸きやすいよう、某企業の店舗におけるマニュアル作りを例に解説していきます。

マニュアル作成背景

この企業には、店舗で顧客対応をするスタッフがいます。お客様をお迎えし、営業担当者に引き継ぐまで快適に店内で過ごせるように気を配り、最後は営業担当者と共にお見送りをする業務です。会社の体制変更に伴いそのスタッフの集合研修がなくなり、現場ではOJTによって新人を育成する体制を急ピッチで調える必要性が出てきました。

 

視点1:人材育成の計画

最初に取り組んだのは、顧客対応に必要な業務を洗い出すことです。 全国で最も優秀なスタッフと一緒に、その業務に従事するにあたり、誰もが備えるべき「マインド」と「業務内容」を洗い出しました。その数百数十項目です。

そこから、その項目全てを"6ケ月で習得しできるように育てる"という期日を設定し、そこから「入社初日」「入社~3日間」「~1週間」「〇ケ月」「~6ケ月」と教える時期を時系列に並び替えていきます。時系列にしてみると、同じ"コミュニケーション"というカテゴリーの項目でも、通常の業務をしながら教える・教わるのに適切な順番があり、入社間もない時期と半年後では求める内容も変わってくることが分かります。

これが現場で使えるマニュアルを作るうえで、土台となる計画です。"いつまでに何ができるように育てたいのか"を明確にすることで、どのようなストーリーで育てていけばよいのかが見えてきます。

 

視点2:いつ誰がどのように使うのか

この企業の店舗では、OJTができるレベルのスタッフは限られており、全ての店舗にいるわけではありません。つまり数名のOJTスタッフで複数店舗を回りながら、OJTを互いに引き継ぎながら育てていく体制です。

この体制で重要なのは、どこまでOJTが進んでいるのか、情報を共有できることです。
教えるべきことは既に時系列で整理されているため、それに連動した「チェックリスト」を付けました。これによって新人AさんはどこまでOJTが進んでいるのか、前回までに教えた内容がどこまで実践できているのかを誰もが確認できます。マニュアルを情報共有ツールにしてOJTのPDCAを回せる仕様にしたのです。

もう一つ教えるスタッフのために用意したのが、業務マニュアルと連動した「教え方のマニュアル」です。
OJTをするスタッフの本業は顧客対応なので、人を育てるための訓練を受けているわけではありません。"人を育てるための心構え"、"このページはどのように教えれば良いのか"、"この業務で一番強調して伝えるべきことは何なのか"など、OJTをする側が迷わず自信を持って教えられるサポートツールを用意しました。

この事例が示しているように、人材育成の計画やマニュアルを使う人や場面を明確にすることで、マニュアルの機能が変わってきます。単に業務を整理するのではなく、"現場のOJTを進めやすくするにはどうしたら良いか"という視点は、使えるマニュアルを作る大切な視点なのです。

次回は、いよいよマニュアルの中身について触れていきます。

筆者

マーケティング研究協会

中村 佳美

商社の事務職、営業コンサルティング会社の営業職を経て、2012年マーケティング研究協会入社。企画営業職として、クライアントの営業力強化、マーケティング強化を支援している。クライアントの支援を通じて学んだ人材育成ノウハウ、新人時代に受けた上司の優れたOJTの経験を活かし、営業販売部門のOJT・人材育成業務のマニュアル作成支援も行っている。

Pickup column

この筆者の別のコラム

コラム

2020.06.08

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第8回 マニュアル作りの現場か…

マーケティング研究協会

中村 佳美

第7回では、マニュアル作りにおいて、教育要素を洗い出す工程でのインタビューの重要性について触れました。 最終回の第8回では、教材の多様化について触れていきたいと思います。

コラム

2020.05.11

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第7回 マニュアル作りの現場から …

マーケティング研究協会

中村 佳美

第6回では、育成担当者(教える側)に対する教育支援について触れました。 第7回では、マニュアル作りの現場に戻り、教育要素を洗い出す工程でのインタビューの重要性について触れ…

コラム

2020.04.07

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第6回 OJTの体制づくり2「育成…

マーケティング研究協会

中村 佳美

第5回では、マニュアルの原稿を作成する段階で、込めるべき"思想"の重要性について述べさせていただきました。 第6回では、マニュアルを使って実際にOJTをする育成担当者の教…

コラム

2020.03.16

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第5回 良いマニュアルはWHAT+…

マーケティング研究協会

中村 佳美

第4回では、"現場で使えるマニュアル作りに必要な2つの視点"をとある接客業務のマニュアル作りをケースに解説しました。 第5回では、実際にマニュアルの原稿を作成する段階で、…

コラム

2020.02.14

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第3回 現場で使えるマニュアル作り…

マーケティング研究協会

中村 佳美

第2回で、短時間で効率的にOJTを実現する体制づくりとマニュアルの活かし方を解説しました。(第2回 OJTの体制づくり①「時間が無い中でどのようにOJTするのか?) 第3…

コラム

2020.01.29

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第2回 OJTの体制づくり①「時間…

マーケティング研究協会

中村 佳美

第1回はビジネス環境の変化を背景に、人材育成やOJTの現場でマニュアル存在が有効であることに触れました。(第1回 マニュアルの必要性が高まるOJT現場) 第2回は、短時間…

コラム

2020.01.21

OJT・人材育成マニュアル作成のススメ 第1回 マニュアルの必要性が高まる…

マーケティング研究協会

中村 佳美

ここ数年、OJTや人材育成のためのマニュアル作成のご依頼が増えています。 発想力や思考力、柔軟性や臨機応変さが求められるこのご時世で、あえてマニュアルが求められる背景には…

コラム一覧はこちら

Pickup seminar

関連するセミナー

記事はありません

セミナーをお探しの方

お問い合わせ