コラム

医薬品ブランドプランの精度を上げる視点 ~COVID-19対策をマーケティングから考えてみる~

元外資系製薬企業  マーケティンググループマネージャー

末延 成彦

2020.05.06.Wed.

2020年5月1日現在、COVID-19感染拡大による有史以来の危機的状況は収束の見通しが立たない。医療用医薬品の販売に関わる皆さんも環境の激変に対して必死に対策していることと思います。


さて、日本での感染予防策はどんなゴール、ビジョン、戦略、戦術、KPIなどがあるかという目線で見たことはありますか?政府対策本部あるいは自治体から発せられるメッセージは果たして国民の行動変容即ちBehavior Changeをきちんと誘導できているでしょうか?あるいは報道が連日伝える人数などの数値は戦略達成を反映できるKPIになっているでしょうか?あなたならどんなプランを短時間で考えますか?


これに比較すれば医薬品の年度ブランドプランは随分と時間に余裕があることなのかもしれませんね。私見ですが、日本のリソースや法体系などを考慮した現在の対応策の数々は、もちろん理想的とは言えないものの、諸外国に比較してもよくやっていると評価できるものだと思います。しかしながら、注文をつけたくなる事象も正直言ってそこそこあるというのが事実です。


皆さんにも同感いただけると思う事例を参考までに紹介しますね。


北大西浦教授のシミュレーションでは、「他人との接触」を80%削減することで急速な感染者数の減少つまり封じ込めが見込めるとされました。しかし、政府は当初、会見などで8割減らすようにとだけ伝え「何を」を明確にしていませんでした。


それを受けた報道各社は、主要駅などの人出つまり人数がどれだけ減ったかを盛んに報道するようになりました。これは「外出自粛」という別のKey wordと同じように捉えられたこと、NTTなどが提供したことでデータとして利用(可視化)できたことが要因と思います。


エッセンシャルワーカーの就業人口について正確な数字を知りませんが、警察、官公庁、消防、医療機関、介護施設勤務、郵便や宅配便などの物流、公共交通の職員、食料品販売などなど多くの人たちが自宅待機ではなく、公共交通機関を使って出勤し、この危機に立ち向かっています。他にも建設現場の作業員や工場勤務、中小企業などどれほどの人が外出を自粛したくてもせざるを得ないのでしょうか。彼らを含めた人出つまり外出する人数を80%削減することなど不可能ですし、西浦先生もそんなことは言っていませんでした。


ところが、多くのメディアがここの駅ではまだ60%しか減っていないとか、某地方都市では40%だと人出を中心に報道しています。


果たして、この人出データは本当に接触率の代用指標なのでしょうか?「行動変容」(皆さんにとって馴染みのある"Behavior Change"のことですね)がどのくらい達成できたかを測る先行成果指標、即ちKPIをどうするか?などのプラン設計がいかに重要かを改めて認識いただけると思います。


製薬企業でも同様の間違いは各地の支店や営業所で起こっていそうな気もします。

さあ、皆さんなら自身のブランドプランにおいて、精度の高いマーケットデータの分析から導き出された適切なゴール、戦略とそれを実現するどんな戦術、Key MessageとKPIで営業部門と連携できますか?それは、最終的に顧客の行動変容を引き起こせるプランになっていますか?


このオンライン版演習トレーニング講座で少しでもそんなブランドプラン作りの醍醐味に触れてもらうことが出来たなら幸いです。

筆者

元外資系製薬企業  マーケティンググループマネージャー

末延 成彦

10年超のMR経験を経て、複数の外資・内資製薬企業のマーケティング部門にてジャンルの異なる疾患領域の製品マーケティング業務を担当。 プロダクトマネージャーやグループマネージャーとして新製品の発売や適応追加などを数多く経験。2018年11月より個人でマーケティングコンサルタントとして活動し、現在に至る。信条は、医薬品の価値最大化を通じた患者さんと医療の発展への貢献の追求。

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