2019年10月28日(月)UP マーケティング
医薬品プロダクトマネージャーの育成を考える
~ブランドマネージャー(プロダクトマネージャー)の選抜はどうすると良いのか?~
それぞれの製薬会社で、独自の基準を持ってブランドマネージャーを選抜している現状がありますが、「そのプロセスや基準が妥当なのか」についてはしっかり検証されないままに続けられているのが実態でしょう。
これまで複数の製薬企業に聞いたケースでは、MRからブランドマネージャーになるケースがおよそ6割以上を占めていてどの会社でもメインルートと言えるでしょう。MRの次に多いのは、臨床開発、学術(資材作成担当)などからの異動です。
もちろん、他社から経験者を採用するケースは外資系を中心に一定以上ありますが、ここでは社内からの異動をベースにどのような選抜システムが妥当なのか、そしてその検証をどうするのかを考えます。
「MRのなかで若くて成績が良くセンスのいい、感度の高そうなのを選んで、ブランドマネージャーに任命している」という回答をしてくれたのは、ある大手製薬会社のマーケティング部長です。感覚的にはわかります。もっともマーケティング部長に誰を選抜するかという人事権までは与えられていないケースもあり、もっと上の役員が決めるブラックボックス状態であることもめずらしくありません。
ここで提案するのは、「MRのなかで若くて成績が良くセンスのいい、感度の高そうな」人物をどんなプロセスで選抜するかに関する提案と思って下さい。下記6項目が提案です。
① |
売上げ成績(達成率、グロス金額、重点品・製品別) |
全国上位10%程度 |
② |
行動指標KPIの達成率 |
基準以上・主要達成 |
③ |
プレゼン力 |
上位20% |
④ |
判断・思考力 |
上位20% |
⑤ |
メディカル理解力 |
社内試験上位20% |
⑥ |
社内コラボレーション力 |
平均以上 |
これら①~⑥で絞ったのちに、年齢要因(たとえば30代前半)、経験要因(たとえば大学病院経験必須、あるいはGPでの経験必須、2カ所以上のエリア担当経験、チームリーダー経験など)を製品の特性に応じて設定することで、候補者リストをつくることが可能です。成績などは変化しますので、毎年、こうした選抜を行なってリストを更新することが可能です。
私自身が34歳の時にどうしてプロダクトマネージャーに選ばれたかを、しばらく経ってから上司役員から聞く機会がありました。当時は抗がん剤、栄養剤、抗生物質という3領域の製品を扱っていて、領域毎に販売方法(顧客へのアプローチ法)が全く異なっていました。私の場合は、どの領域でも上位5位以内に入っていた、つまりバランスが良かったことが選抜要因だということでした。グロス合計ではトップではないものの、3領域とも5位以内に入るMRは当時いなかったらしいのです。
このようにして作成したMRの候補者リストから、必要な時点でブランドマネージャーを任命するのが実際的です。
もちろん、家庭の事情で異動できないMRもいるでしょうし、支店長が現場(現状のMRでいること)に引き留めることも無いわけではないので、リストに順位を付けて当たって行くことになります。
こうしたシステムの検証作業は、ブランドマネージャー任命の1年後と2年後の考課結果をもとに行ないます。①~⑥で「妥当」と仮定した何が、ブランドマネージャーのパフォーマンス予測を大きく外したのか、何が妥当な予測因子であったのかの検討会を設けることで可能になるのです。
たとえば、思った以上に、着任後の本社内各部署とのコミュニケーションに問題があるブランドマネージャーだった場合に、上記表⑥の「社内コラボレーション力:平均以上」では曖昧すぎるのではという考察が得られ、どのようにしたら、より具体的なコラボレーション・コミュニケーションの能力や実態を計測できるか、という議論に進むでしょう。
これらは、たったひとりのケースで判断は出来ませんので、数名がこのプロセスで選定され、データを蓄積してから行なうことになります。
完全なシステムをめざしても難しいでしょうから、まずはできるところからスタート(リーンスタート)させて、その仕組みを検証することが大事になります。
この筆者のコラム
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