2016年11月08日(火)UP 営業力強化(生産財・産業財)
代理店戦略=再考3【7 :その他 「広域型代理店」と「地域密着型代理店」の併存】
「代理店戦略=再考= 」「代理店戦略=再考2=」と合わせて、生産財・産業財メーカーの皆様にとって代理店戦略立案の一助となれば幸いです。 なお、本コラムでいう「代理店」とは、製品・サービスをエンドユーザー(法人)に販売するためのチャネル(販路)のひとつであり、一般的には販売代理店、ディーラー、特約店、販売店などの名称で呼ばれている企業を指します。 CONTENTS 第1回 『なぜ代理店を特性ごとに分類することが必要なのか?』 第2回 『分類A 「専門商品複合機能店」の戦略課題とメーカー政策』 第3回 『分類B 「総合商品複合機能店」の戦略課題とメーカー政策』 第4回 『分類C 「専門商品単機能店」の戦略課題とメーカー政策』 第5回 『分類D 「サービス型代理店」の戦略課題とメーカー政策』 第6回 『分類E 「課題獲得型代理店」の戦略課題とメーカー政策』 第7回 『その他 「広域型代理店」と「地域密着型代理店」の併存』
前回のコラムでは、代理店の特性分類E「課題獲得型代理店」について、代理店の戦略課題とそれに対応したメーカー政策をご紹介しました。今回は少し違う観点になりますが、「広域型代理店」と「地域密着型代理店」の併存について見ていきます。
1.「広域型代理店」と「地域密着型代理店」の併存のさせ方
全国展開をしていたり複数県に跨ってビジネスをおこなっている代理店(=「広域型代理店」)と、ある特定の地域や県でビジネスをおこなっている代理店(=「地域密着型代理店」)を併用しているメーカーは多いと思います。このような場合、メーカーとして気をつけなければならないことは、それぞれのタイプの代理店の役割を明確にするということです。
一つの考え方ですが、「地域密着型代理店」は展開地域の情報収集と需要開拓を主な役割とし、「広域型代理店」は面的サービスをカバーすることを主な役割とすることがあります。
「地域密着型代理店」の代表的な特性としては、地域人脈を活かしたビジネス獲得や、小回りのきく顧客対応が可能であることが挙げられます。ですので、地域の細かい需要をモレなく取り込むことに、その役割を持ってもらうということです。
一方「広域型代理店」の代表的な特性としては、広範囲にビジネス展開をしているということで顧客の事業拠点が広域に分散している場合に同一条件での対応が可能であることが挙げられます。ですので、比較的規模が大きく広域に展開している顧客への対応をしてもらうということです。
2.代理店間の"取引調整"がメーカーとしての課題
この2つのタイプの代理店を併用していくことの課題として、代理店間の取引調整が必ずといっていいほど挙がってきます。同一顧客からの引き合いを複数の代理店が獲得してきた場合のメーカーとしての対応が問われることになります。
ここで大切なことは、その調整・判断基準が代理店間でわかりやすく納得性のあるものであるということは必要です。以下にいくつかの対応例をご紹介したいと思います。
案件・物件を共有システムで管理・運用している場合、引き合い情報をその共有システムに先に登録した代理店が優先的に商権を持つという方法です。これは代理店に期待する役割の一つである「情報収集機能」を元としており、先に引き合い情報を登録したことで先行情報を収集したとみなし、代理店としての役割を果たしていると考える方法です。
また、顧客と代理店の関係の深さや過去の取引実績をもとに判断し、どちらの商権があるかを決める方法もあります。
そして、案件・物件内容の種類によって対応ができるか、過去に同種の案件・物件を手掛けた実績があるかといった、得手不得手による判断もあります。
一番多い対応方法としては、顧客の選択に任せるという方法があります。
いずれにしても、判断基準を明確にオープンにしておくことが大切と考えます。そうでなければ、一つの案件・物件に複数の代理店が関係し、無駄にルートが長くなる(多段階の流通構造になる)事象が発生してしまい、複雑難解な調整業務が発生したり、メーカー・代理店双方が利益を確保できなくなってしまいます。
3.「メーカー販社」と「独立系代理店」の併存方法もほぼ同じ
メーカーによっては営業部門を分離独立させ、資本関係のある販売会社(以下メーカー販社)としている企業があります。この場合、2つの流通構造が考えられます。
まず一つ目は、メーカー販社は基本的には卸業務をおこなっており、独立経営の代理店(以下独立系代理店)と縦の関係している場合です。この場合は特に取引調整は発生しません。
そして二つ目は、メーカー販社が直販と卸業務の双方をおこなっており、メーカー販社の直販部門と独立系代理店との間で、同一の顧客から引き合いを獲得し、後に調整が必要となる事があります。この場合の対応方法は、基本的には前述の「広域型代理店と地域密着型代理店の調整方法」と同じであると考えます。ただし企業の中には、直販部門と独立系代理店がバッティングした場合、その案件・物件は独立系代理店に任せて直販部門が手を引くという取り決めをしている場合もあります。
全7回にわたり、『代理店戦略=再考Ⅲ=「代理店の特性分類別」代理店の戦略課題とメーカーの政策」』と題して、メーカーが代理店戦略を立案するときに考慮すべき代理店特性を分類別にご紹介してきました。皆様のお役に立てていただけましたら幸いです。
ぜひ皆様のビジネスが成功されることを祈願して最終回とさせていただきます。長きに渡りご精読ありがとうございました。
■■Shimizu's EYE!■■ 専売(代理)店と併売(代理)店のどちらで展開していますか?
2016.10.26のウェビックニュース(https://news.webike.net/)に、国内二輪車メーカーが国内の販売網再編の一環として国内販売モデルをすべて取り扱う自社製品専門店を拡充する記事が掲載されており、年内にリニューアル店舗をオープンさせるとありました。
今までは同社直営の専門店(=専売店)のみの展開であったところを、直営以外の販売店も加えるとのことです。このことにより国内の販売網を、国内販売モデルをすべて取り扱う「専門店」と中古型のモデルを取り扱う「正規取扱店」の2系統に再編することになります。記事によると、専門店では二輪車の販売だけでなく、ライフスタイル提案をおこなう店舗であると出ています。
販売網を拡充させるにあたり専売店と併売店のどちらを展開させるかといったことがメーカーでは議論がされることがあります。専売店には専売店の、併売店には併売店のメリットデメリットがあり、また、売り手(メーカー)側から見た場合と買い手(顧客)側から見た場合とがあります。
一般的に、専売店の価値とは、
1)取扱商品に関する専門知識の深さ→買い手側のメリット
2)メーカーの政策理解と浸透→売り手側、買い手側双方のメリット
3)販売目標に対する意識の高さ→売り手側のメリット
が挙げられます。
また、併売店の価値とは、
1)複数メーカーの商品をワンストップ購買が可能→買い手側のメリット
2)複数メーカーの商品を比較が可能→買い手側のメリット
3)複数ブランドの最適な組み合わせが可能→買い手側のメリット
となります。
こうしてみてみると、売り手側としては専売店の方が自社のコントロールが聞きやすいことがわかります。しかしながら、買い手側から見ると併売店の方がメリットが大きく感じられます。また、一般的に専売店は固定客に対する緊張感が薄れやすくなり、ある日突然、固定客の離反が起こる傾向があります。
この記事では、専売店ではライフスタイル提案をおこなうことに加え、指定整備工場の認証取得を進めることにより、買い手により大きな付加価値を提供して新たな顧客獲得を目指すとしています。
双方のメリット・デメリットをしっかりと整理した上で、自社の販売戦略を実現させるにふさわしい販売網を築くことが大切です。
専売店と併売店のメリット・デメリットを整理できていますか?
専売店で、より大きな付加価値を提供する仕組み・仕掛けはありますか?
併売店で、自社と協業のできる仕組み・仕掛けはありますか?
■■編集 はみ出しコラム■■
ビジネス上、どうしても競合他社の動向などは押さえておきたいものです。市場の規模の縮小などもあり、エリアや分野で棲み分けできるほど余裕がなくなっているのは、どの業界でも同様かと思います。そのような状況下では、パイを広げるために競合に先手を打つことができるか否かが大きな分かれ目となるためです。
あるメーカーでは、代理店から定期的に案件の受失注レポートを提出してもらっているようです。そのレポートには受失注情報だけでなく、競合メーカーや競合代理店の動きも含まれているそうです。このような方法でも競合情報は収集できます。
また、レポートの内容を評価し点数を付けるという試みも行っているようです。面白いのは地域密着型の小規模代理店と数百名の社員数で全国展開している代理店とでこのような競合情報の収集状況では大差がないということです。一概に規模が大きいから有利、規模が小さいから不利ということは、こと情報の収集についてはないように感じさせられました。
(ひ)
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この筆者のコラム
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