2016年4月26日(火)UP 営業力強化(生産財・産業財)

生産財・産業財メーカーの営業生産性向上を考える
5:顧客の購買特性別にみるメーカー営業の生産性を高める対応策
〜その3 組織変革商材〜

前回のコラムでは顧客の持つ情報量が少なく、製品の購買頻度は高い「買替難商材」という区分のメーカー営業の生産性を高める対応策を考えました。今回はその3として、顧客の持つ情報量が少なく、製品の購買頻度が低い「組織変革商材」を取り上げてみたいと思います。

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1.メーカーと代理店の役割

前回のコラムではで買替難商材における顧客の購買プロセスと、「購買部門」と「使用部門」、それぞれの購買関与者が各プロセスにどのように関わるかをご紹介しました。今回も引き続き顧客の購買プロセスを軸として、生産性を高める正しい営業プロセスを見ていきます。

<顧客の購買プロセス:例>
 Step1 購買・導入の社内検討
 Step2 情報収集・サプライヤー候補の選定
 Step3 サプライヤー/製品の評価・選定
 Step4 購買・設置・導入・使用

自社(メーカー)が直販として営業を行う場面と、代理店と協業して営業活動を行う場面に大別されます。後者では自社がいかに正しい営業プロセスを踏もうとしても、代理店と足並みが揃わなければ、効果を十分に発揮できるとは言えません。
ここで一般的なメーカーと代理店が担うべき役割をご紹介します。業界や商材によっては、当てはまらない点もありますが、基本的な考え方は共通するものとなります。

代 理 店:顧客の購買部門・使用部門と日々接し、購買プロセスにおける、今後の社内検討期(Step1)や情報収集期(Step2)に適切な情報を提供する。

メーカー:代理店の営業活動(購買活動のStep1や2)において、適切な情報提供ができるように代理店を教育する。また、選定基準(Step3)を踏まえ、導入後フォローを含めた提案を組み立てる。

次の項では、この役割を念頭に、組織変革商材の購買プロセスにおける「購買部門」と「使用部門」。がどのように関わってくるかを見ていきます。

2.「その3組織変革商材」 購買プロセスごとの購買関与者の行動・役割

ここでいう「組織変革商材」とは、顧客の持つ情報量が少なく、製品選定に関して顧客のみでは完結できない場合が大半を占めます。また、購買頻度が低いことが特徴です。具体的には機械や設備装置、情報ネットワーク、オフィス移転などの不動産関係、人事制度など社内の仕組みの変更に際してのコンサルティングなど、案件型(物件型やプロジェクト型ともいいます)のことをいいます。

■Step1 購買・導入の社内検討
「購買部門」
発注頻度が低く、案件あたりの単価が高いため投資的要素が非常に高くなります。そのため、まずは購買部門ではなく案件の使用部門の責任者もしくは現場管理者が検討をおこないます。案件の責任者がその案件の要求水準と概算予算を設定してから購買部門が関わってきます。
「使用部門」
商材の使用部門が主体となって検討を進め、部門長やその案件の責任者に上申をおこないます。案件の種類・内容によって使用部門が変わるためこの段階では外部からは見えづらいという特徴があります。

■Step2 情報収集・サプライヤー候補選定
「購買部門」
使用部門から上申された求める要件や効果の定義にもとづき、検討対象サプライヤーリストの作成をおこないます。あわせて提案要請先サプライヤーの選定と提案要請をおこないます。
「使用部門」
使用部門は購買部門と連携し、検討対象サプライヤーリストの作成と提案要請先サプライヤーの選定をおこないます。日常的なサプライヤーからの情報提供や口コミ・評判、過去の実績などをもとに選定をおこないます。

■Step3 サプライヤー/製品の評価・選定
「購買部門」
サプライヤーからの提案内容と価格を精査し、サプライヤーと製品を選定、意思決定者が承認、決済をおこないます。
「使用部門」
サプライヤーからの提案を当初設定した要件や効果に照らし合わせて検討をおこないます。この段階でサプライヤーからのデモンストレーションや工場見学、製品のテストなどをおこない、選定・判断に活かします。

■Step4 購買・設置・導入・使用
「購買部門」
意思決定にもとづき手続きをおこないます。
「使用部門」
導入決定から引き渡し・使用までのプロセス(設計・施工、設置工事など)、引き渡し後の使用中において、サプライヤーと緊密に連携して進めます。使用にあたって問い合わせや各種のサポート要請をおこないます。

3.生産性を高める売り手側の対応策

案件が比較的単発的に発生することがこの商材の特徴です。また、案件あたりの単価も高くなると同時に顧客企業のビジネスに直結する傾向がこの商材にはあります。ですので、他のタイプの商材以上に計画的な購買となります。そのため、投資的な意味合いが強く、関与者(部門)が複数にまたがり求める要件とその効果を厳密に審査・選定をおこないます。この商材の営業活動でのポイントは、徹底した顧客管理と案件の先行情報取得、案件の見込み度管理にあります。
新規顧客開拓の場合は、その顧客においてどこにビジネスチャンスがあるか、そしてキーマンと購買意思決定構造をつかむことが先決となります。また、投資的意味合いが非常に強いため、また顧客側は当該商材に関する情報も少ない傾向があるため、現場使用部門やキーマンに正しい情報を適切に提供し、自社の認知と評価を高めておくことも必要です。
まずは検討対象サプライヤーリストに載り、提案要請を受けるまでが大きなハードルとなります。使用部門が望む要件や効果を定量的に提示することも大切ですが、意思決定権組織や決定権者の検討・選定をしやすくする情報提供や支援が欠かせません。
既存顧客においては、近年では購買部門側の意向が強く働く顧客企業が増えてきています。以前は現場使用部門の要件が優先されていた顧客企業でも、購買に関するパワーバランスが変わってきており、今までの営業活動を変える必要も生じています。自社商材や提案が顧客企業の事業運営、業績にどのようなインパクト(投資対効果)を与えるのかを具体的に示し、価格などの単なる購買条件だけでない意思決定を促すためのコミュニケーションが求められます。

ですので、代販の場合は代理店と連携を密にして先行情報の取得に全力を注ぎ、早い段階で自社商材に近いスペックを顧客企業に設定してもらえるように働きかけることが生産性を高めるための第一歩となります。
代理店との連携については、顧客企業から見た"期待"を代理店に対するものとメーカーに対するものとに整理・分類しておくことがポイントです。一般的には、代理店には日常の対応と提案、アフターフォローなどを顧客企業は期待しており、メーカーには新技術・新製品の開発や技術情報の提供、ブランドイメージ、技術的サポートを期待しています。そのため、顧客企業からの"期待"を正確に把握して置かなければ、メーカーと代理店との役割分担がスムーズにいかず、活動の重複があればコスト高になりますし、モレやヌケがあれば受注・契約には至らず、結果として営業生産性は高まりません。

「組織変革商材」は顧客企業の事業運営に大きく影響を及ぼすため、購買は計画的であり、製品選定には非常に慎重になり検討も長期に渡る傾向があります。まずは先行情報を取得し顧客企業の動向を常に把握することが営業生産性を高めるカギとなります。

次回は分類その4「日常業務外商材(顧客の持つ情報量が多く、製品の購買頻度が低い)」を取り上げてみたいと思います。

コラム筆者紹介

清水徹、佐藤光
マーケティング研究協会 人材育成支援部

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