2015年4月03日(金)UP マーケティング

オンデマンド・ビジットで何を残せるかが製薬企業MRの価値を決める2

MRのオンデマンド・ビジット(visit)とは?

ひとつの問題は、そうしたオンデマンド・ビジットの機会が現状ではそれほど多くないことでしょう。 つまり、できるMRにとってみると自分の実力発揮の場面が少なく、反対に実力が伴わないMRにとってみても練習する場がないことになります。
ともすると、企業のMR研修は、オンデマンド・ビジットは横に置いてしまい、非オンデマンド訪問時に「MRとしてどんなインパクトを残せるか」というところに焦点を置いてしまうことになっているのではないでしょうか。こうした答えの出にくい、そして必ずしも先方が求めていない非オンデマンド型アクションばかりを追求してしまう回路に陥っていなければ良いのですが。

ここで私が低提唱したいことは、もっとMR研修のなかにリアルな「問い合わせ」への回答練習を大胆に取り入れることです。病医院から寄せられるリアルな問い合わせこそは、当該病医院にとっての「オンデマンド・ビジット」の材料です。そのまたとない材料を当該病医院の担当MRだけのものにするのはあまりにもったいないことです。
次に具体的な進め方を示します。

「オンデマンド・ビジット」ダントツ化計画の進め方

■1■
プロダクトマネージャーは、自分の担当製品について病医院からコールセンターやMRに寄せられた質問を過去1年間分きちんと集めて分類し、汎用性のありそうで、製品にとって重要な、単純でない質問を10〜20程抜き出すことから始めます。

■2■
次のステップは、そうして集めた精選質問集をMR向けに配布し、「自分の施設からこうした問い合わせがあった場合にどう答えるのか?」を徹底して課所単位で練習してもらうことです。 医学・薬学的に妥当であることは当然として、院内状況を考えた固有な回答になっているか、資料の提示の仕方、説明のわかりやすさ、一方通行でない話し方、など模擬プレゼンでやるよりも、濃い内容ができるはずです。
この練習成果は半年に1回程度、全社(または支店単位)コンテストで競うのも方法でしょう。

■3■
ある特定の主力製品について、10個以上の質問を取り上げ十分な回答ができるレベルになると、MRとしては医師のニーズについてのアンテナが立ってくると共に、非オンデマンド訪問時にも「ニーズを探す質問」ができるようになります。できるMRと認識してもらうのは容易なことではありませんが、オンデマンド・ビジットを大切にし、その機会を200%活かすために、普段からオンデマンド・ビジットを想定した練習を積むことが実力向上の強力なツールになります。

おわりに

今回は、MRとしてのオンデマンド・ビジットに光をあてて、そこを強化することをご提案しました。強化すると言っても、急には顧客のデマンドは増えないわけですから、そこをどう工夫してMR力の向上につなげるかをひもときました。
薬剤部から見たコールセンターの役割は、施設担当MRの能力とかなり相補的でした(片方が低レベルだと、もう片方で補う関係)。
製薬企業としては、MRのオンデマンド対応力について、他社を凌駕するレベルまでに伸ばすか、そこは断念してコールセンターに資源を集中させるか、という議論があっても良いはずですが、多くの場合は、どっちつかずで、両者の役割分担を含めて現状肯定的な流れをそのままにしているのはきわめて残念です。管轄部署が違うことも影響しているでしょう。

「医療者のパートナーになる(なりたい)」とは、よく言われるMRの理想像ですが、こうしたことをかけ声だけにおわらせず、既に出来ているMRの評価されている活動内容をもとに、各企業が全力を挙げて取り組む価値はあるはずです。全社の全機能をマーケティングにフォーカスさせるトータル・マーケティングの始まりです。 医薬品のマーケターは、MRの活動の将来像を描き、それを反映させた活動方針、研修プラン、活動KPIの設定まで持ってゆくことなしに、つまり人材育成の視点なしに医薬品マーケティングの実行はできないことを理解しなくてはなりません。
この小稿が医薬マーケターはじめ営業トレーニング部門に所属するかたのお役に少しでも立てば幸いです。

コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 尾上 昌毅
所属 株式会社マーケティング・インサイツ 代表取締役
略歴 北海道大学薬学部卒業後、プリストルマイヤーズ、キリンビール(現協和発酵キリン)ノバルティスファーマに勤務。11年のMRを経験後、教育研修室長、プロダクトマネージャー、マーケティング部長、事業戦略部門長などを歴任。2009年より現職でマーケティング研修・コンサルティングを手掛ける。患者さんや医療従事者のインサイトを取り入れた、開発時から発売後までの幅広いマーケティングの可能性を追求している。
公開セミナー 医薬品業界:プロダクトマネージャー養成講座【基礎編】
コラム オンデマンド・ビジットで何を残せるかが製薬企業MRの価値を決める

医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント

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