2012年10月02日(火)UP マーケティング

医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント
【3.製品ライフサイクルの導入期】

製品ライフサイクルの導入期を成功させる


導入期の成功は、それに先行する発売準備期や製品計画期での活動にかかっているといえます。

《 発売準備期や製品計画期におけるPre-marketing》


発売時の立ち上げを決める重要な要因は、その時期の製品のKSFを確実におさえられるように準備を行うことです。

ともすると何もかもが重要に見えてしましますが、いたずらに、「すべての準備活動を厚くする」のでなく製品「導入期」におけるKSFが満たされるよう準備する姿勢が成否を分けます。
その意味では今考えているKSFが妥当かどうかを、市場調査やヒアリングで確認し、社内が合意できている状態がきわめて重要です。

KSFを仮定したら、そこに向けた活動を重層的に組み立てます。Global企業のマーケティングガイドには、このことを、「機会やKSFに対してinvest disproportionately(不釣り合いなほど、極端に投資せよ)」と書かれています。

ブロックバスターになる製品は、この導入期に非常に多くの投資をしています。とは言え、最初から投資ありきではなく、どこに集中的に投下するのかを決めます。
承認の前にできる活動の種類は多くないように見えますが、実はここで、市場とのつながりを創ったり、社内のノウハウを蓄積するなどの重要な機能があります。上市までに実施できる活動の一部を以下に挙げますが、KSFとの関係で強化する価値があるものに重点を絞ることを忘れないようにしましょう。


  • 市場調査の精緻化:STP(セグメンテーション、ポジショニングの仮説検証)

  • フォーキャストモデルの作成と改訂(Develop・Revise)

  • 早期市場浸透のためのパッケージ工夫(顧客ヒアリング)

  • 開発参加医師の精査(研究志向、臨床開発志向、診療プラクティス重視)

  • Opinion Leaderの決定と対応

  • アドバイザリーボードによる、治療コンセンサスの形成・確認

  • 後期臨床開発のテーマとニーズ検討。試験開始準備

  • 基礎領域研究者の整備(作用機序解明、作用イメージングなど)

  • 製剤安定性、配合試験などのオプショナル試験

  • 学会とのコネクション醸成

  • ブランディング統一の準備

  • 学会での教育講演・シンポジウム

  • 患者会接触

  • パブリックリレーション

  • グローバル対応

  • MR教育の準備(承認前のヒアリング調査が実施できるレベル)

  • KSFと強く関連する場合はコメディカルへの対応準備

  • PMSの準備:ケースカード項目、医療現場へのフィードバック・活用案

  • 特約店施策の検討

  • コールセンターQ&Aの準備

  • 活用される患者向け資材の開発



  • 《 上市直後の活動 》

    製品の上市後は、施設への採用が進みますが、標的とするターゲット施設すべてに対する納入までには、1年程度の時間がかかります。準備期から行ってきた活動が成果を発揮できなければなりせん。たとえばKOL対策は、臨床試験参加医師と重なる場合と異なる場合がありますが、それらが採用や、初期の臨床例報告につながるように道筋をつくるのがマーケターの役割です。
    採用が進んでいる最初の1年間程度は、施設セグメンテーションも活きてくる時期です。すなわち、未採用の施設、採用したもののまだ症例数が一定以下の施設、採用後多くの症例をこなしている施設、の3つほどに分かれると思われますが、マーケターの出す施策やメッセージには、そうしたセグメントを意識したものになっているかどうかチェックが必要です。
    この時期に「くさびを打つ」とは、自分たちの製品にとってどんなことなのか、何が必要なのかを、検討できるチームつくりが求められます。


    検討チームでは

  • 準備期には見えていなかった、薬剤採用に関する障害や機会

  • 採用に関する成功事例の共有

  • 説明会や薬剤ヒアリング実施時における質疑などのノウハウの文書化(社内アーカイブ)

  • 初期に得られるPMSデータのエッセンスをMRに流すしかけ

  • MR向けに追加教育が必要な、顧客や疾患、薬剤の知識の整理と教育計画



  • などについて、タイムリーに施策へ反映出来るよう進めます。

    また、競合社がある場合には、どのような反撃を取っているかを広いステークホルダーから情報入手します。顧客である医療関係者(医師、薬剤師、看護師)、卸MSが主な対象です。マーケター、学術、MR、コールセンター窓口、臨床開発モニター、など企業の全部を窓口にして収集しても十分な情報が得られない場合も多いことから、上市後のトラッキング(認知度や評価、処方状況を追いかける市場調査)に競合社のメッセージや、対応についても計測できるものを含めるようにします。





    次回は製品ライフサイクルの延長について述べます。


    コラム筆者紹介

    講師紹介

    講師イメージ

    講師名 尾上 昌毅
    所属 株式会社マーケティング・インサイツ 代表取締役
    略歴 北海道大学薬学部卒業後、プリストルマイヤーズ、キリンビール(現協和発酵キリン)ノバルティスファーマに勤務。11年のMRを経験後、教育研修室長、プロダクトマネージャー、マーケティング部長、事業戦略部門長などを歴任。2009年より現職でマーケティング研修・コンサルティングを手掛ける。患者さんや医療従事者のインサイトを取り入れた、開発時から発売後までの幅広いマーケティングの可能性を追求している。
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