2012年9月24日(月)UP マーケティング

医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント【2.製品ライフサイクルのポイントと問題点】

製品ライフサイクルのポイント

医薬品の場合の製品ライフサイクルの段階別ポイントをまとめました。

pls2-1.bmp

新製品を成功させるのに重要なのはどの段階でしょうか? 大型製品であるほど、発売準備期の2年ほど、そして導入期の数年間がその後の成長を決めるのではないでしょうか。目標は「(ブランド)チームを回す」こと、そして「(市場に)クサビを打つ」ことです。

イノベーションの普及論とPLM

この製品ライフサイクルを理解するためには、ロジャースのイノベーション普及論をあわせて考えることが有用です。

pls2-2.bmp

イノベーション普及論とは、多くの革新的技術や製品普及などの実証的研究の結果得られたもので、新技術採用に至るまでの時間経過をみてゆくと「採用者の特質」と「構成比」には製品や技術によらず共通性があることがわかり、それをまとめたものです。

ロジャーズの普及理論は秀逸なものですが、各採用者の構成比が(製品や技術の種類によらず)常に一定であることを強く主張していて実態とかい離することがあります。実際に医師の場合にもアーリーアドプターの割合が本当に13.5%なのか、診療科や疾患領域によって違いはないのかなどの点は未解明です。

最初に新技術やそれを用いた製品を受け入れるのは「革新者:イノベーター」ですがそれは全採用者の2.5%を占めます。イノベーターの全体への影響力はそれほど大きくなく、次にその技術を採用する「初期採用者:アーリーアドプター」(13.5%の構成比)こそが、オピニオンリーダーとしての役割を果たす、というものです。(以下「初期多数採用者」、「後期多数採用者」と続き、最後に伝統を重んじ現状の変化がもはや避けられないと納得するまではイノベーションに手を出さない「採用遅滞者」が使用を始める、というものです) 製品ライフサイクルの図にこの普及理論の図を重ねてみるとどうなるでしょう。

pls2-3.bmp

医療用医薬品では、実際に製品が衰退期に入ってからやっと使い始める採用遅滞者(医師)が13.5%もいるとは考えにくいので、成熟期の中くらいで採用遅滞者が使用を開始するように重ねてみました。 導入期の売上に革新者と初期採用者の貢献が大きいことが読み取れます。

製品ライフサイクルの問題点

製品ライフサイクルにはいくつかの問題(弱点)も指摘されています。(Doyle,P&Stern,P: Marketing Management and Strategy,4th Ed, 2006)

pls2-4.bmp

実務上一番問題なのは、いつ自分の製品が次の時期に移るのかの転換点が判断できにくいことです。後になって振り返ればわかることでも、歴史を作っている当人には見えないものがたくさんあります。段階が判らないと、定石を使うのにも判断が鈍ります。それと関連しますが、衰退期と認定するべきかどうか迷っているとき、企業が衰退期と「認定」してしまうことで、プロモーションの注力をおとすことがあります。すると本当に製品が衰退してゆく現象が起きます。つまり製品ライフサイクルは外の力で決まるのでなく、(企業)内部の因子・判断の結果でもあるというものです。

衰退期に入ったと企業やマーケターが認定・宣言してしまうことで本当に製品が衰退し始めることは「自己成就的予言」と呼ばれます。そのように認定せずに、変わらぬ注力を続けていれば、実は成熟期がもっと延長したかもしれないからです。

医療用医薬品で製品ライフサイクルが重要なのは、実際上おもに次の2つの場面でしょう。
  �@導入期をいかに成功させて力強い成長期へ移行させるか
  �A成熟期の期間をいかに伸ばして衰退期への移行を遅らせるか

とくに、近年は開発競争の結果として1-st in classと呼ばれるブレークスルーの薬剤が出てから、2nd-in classの(いわば1-st me too)薬剤が出るまでの間隔が短くなっていることが指摘されています。
pls2-5.bmp

Elley, Tony and Hansen, Neal(2012) Pharmaceutical Lifecycle Managementをもとに作成

また、ブロックバスターと呼ばれる10億ドル製品45種について発売後何年かかって10億ドルになったかを調べたデータでも、その期間が短くなることが示されています(下図)

pls2-6.bmp




次回は製品ライフサイクルの導入について述べます。

コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 尾上 昌毅
所属 株式会社マーケティング・インサイツ 代表取締役
略歴 北海道大学薬学部卒業後、プリストルマイヤーズ、キリンビール(現協和発酵キリン)ノバルティスファーマに勤務。11年のMRを経験後、教育研修室長、プロダクトマネージャー、マーケティング部長、事業戦略部門長などを歴任。2009年より現職でマーケティング研修・コンサルティングを手掛ける。患者さんや医療従事者のインサイトを取り入れた、開発時から発売後までの幅広いマーケティングの可能性を追求している。
コラム 医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント

コラム一覧に戻る

コラムの更新や、マーケティングに関するサービス情報をお届けします

弊社マーケティング研究協会のメールマガジンサービスは、マーケティング研究協会(以下、当社といいます)が無料 で配信するものです。

メールマガジン登録はこちらから

Page Top