2012年9月10日(月)UP マーケティング商品開発・ブランド戦略

医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント【1.医療用医薬品のプロダクトライフサイクルの特徴】

医療用医薬品のプロダクトライフサイクル

開発や製品改良に要する時間が、消費財に比べて格段に長いのが医療用医薬品の特徴です。ですから、消費財とは異なり発売前の準備期(および製品計画期)を考えるほうが一般的です(下図)。

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図の横軸は時間ですが、ここには目盛がありません。

何故かと言えば製品によって大きく違うからです。たとえばアスピリン、カルシウム拮抗剤、シスプラチンなどのように寿命が相当長いものもあります。こうした薬剤は、発売時に薬物療法における何らかのブレイクスルーを起こした薬剤が多く、しかもそれが適応疾患の薬物治療のなかでいまだ重要な役割をはたしているという特徴があります。

ところで、プロダクトライフサイクルでいうプロダクト(製品)とは何でしょうか?実はここを詰めないままに議論をするケースが多いので注意が必要です。製品の集計水準にはいろいろあります。

●消化性潰瘍薬(治療薬カテゴリー)
●プロトンポンプ阻害薬(薬剤クラス)
●タケプロン(ブランド)



のように、どのような集計水準でも製品ライフサイクルは考えることができ、それぞれについて先のようなグラフも描くことが可能です。ここで集計水準を上記の左寄りに大きく取ると、PLCの横軸のタイムスパンは長くなるのが一般的です。

プロダクトの集計水準を変えるとライフサイクルの段階が変わってくることもあります。たとえば抗がん剤のタキサンを取ると市場は現在成熟期にあると見えますが、タキサン系の薬剤であるアブラキサン(アルブミン懸濁型パクリタキセル)は日本では市場導入してまだ数年の新製品であり、フェーズとしては成長期の戦略を取っているはずです。

また、集計水準とも関係しますが、縦軸については売り上げ金額以外に、包装単位(ユニット数)や投与患者数(症例数)も考えられます。金額を用いることが多いのは、簡便性を重視した便宜的なものでしょう。



PLCを理解するために


このモデルが前提としている2つの想定があります。

1)発売前の2段階と発売後の4段階を含めて、6つの段階の順番は製品によらず共通している。したがって次にやってくる段階が何であるかを予測することが可能

2)売り上げ成長率は(発売後)段階的に変化しているが、それぞれの段階の中では市場の状態はある程度安定している

こう想定することで、発売後を4つの段階におおまかに分けることができ、4つの段階のあいだの主要な違いに注目して、各段階で戦略を転換する必要性を唱えているのが製品ライフサイクル理論です。各段階に対応したマーケティング活動の特徴が抽出され整理されているのです。

そもそもどうして、市場の状態が時間の経過とともに変わるのでしょうか?

それは売り手(企業)と買い手(医療者、あるいは患者も含めて)の両方が変化しているからと考えられます。


■売り手側の変化

売り手側の競争・技術の変化:一般的には参入する企業の数が増えてくることで独占的な状態から競争状態へ変化します。また技術革新によって売り手側の技術も変化します。初期の段階では企業間で技術革新の競争が活発になりやすいと言われます。一方PLCの後半では成熟し差別化しにくいなかで市場細分化などの方法で消費者の満足を上げるための努力がなされます。


■買い手側(医師や患者)の変化

時間の経過とともに製品についての新鮮さは薄れ、製品そのものへの興味も低下する傾向はあるでしょう。また顧客(処方者)層が変化し、初期の革新者から保守的な顧客に処方の主体が変化します。さらに使用方法など需要の多様化も見られるようになります。

消費財の場合には、買い手である消費者が年をとること(加齢効果)の影響が顕著に出る領域があります。例えば生理用品では中心顧客が閉経期を迎えると製品そのものが不要になります。また紙おむつも顧客である母親が赤ん坊のために使う期間は最大10年程度と限られます。こうした製品ではブランドが顧客とともに年をとりやすいと言えます。幸い医療用医薬品の領域では、処方者が消費者でないことからこうした現象は見られません。


次回は製品ライフサイクルのポイントについて述べます。


コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 尾上 昌毅
所属 株式会社マーケティング・インサイツ 代表取締役
略歴 北海道大学薬学部卒業後、プリストルマイヤーズ、キリンビール(現協和発酵キリン)ノバルティスファーマに勤務。11年のMRを経験後、教育研修室長、プロダクトマネージャー、マーケティング部長、事業戦略部門長などを歴任。2009年より現職でマーケティング研修・コンサルティングを手掛ける。患者さんや医療従事者のインサイトを取り入れた、開発時から発売後までの幅広いマーケティングの可能性を追求している。
コラム 医療用医薬品のプロダクトライフサイクル(PLC)マネジメント

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