2011年6月01日(水)UP マーケティング商品開発・ブランド戦略

【連載 マーケティング活動にも収益志向を!】 第2回 マーケティング部門に必要な計数マネジメント

販売とは「単に売ること」ではなく、「粗利を獲得する」行為である

今回は実際にマーケティング部門が行うべき計数マネジメントの方法についてお話しますが、その前に「販売する」とはそもそも計数的にどういう意味を持つのかについて考えてみたいと思います。

顧客にとっては商品やサービスを「購入する」ということは、それらから得られる価値と、同等価値の貨幣とを交換する行為だと言ってよいと思います。一方、提供側の企業にとってはどうでしょうか?「販売する」ことは、あるコストを掛けて提供する準備ができた商品やサービスを、そのコストより大きい価値の貨幣と交換する行為であると言えます。つまり、「販売する」側が提供するもののコストと、「購入する」側が受け取るものの貨幣価値が実際は異なっているということです。この差額は粗利と呼ばれていて、粗利の集合体が売上総利益となります。これが企業の利益の源泉で、この絶対金額が低いとどれだけ販売活動をうまくやっても高い利益を期待することはできません。

このように計数の側面から見ると、販売とは「単に売ること」ではなく、「粗利を獲得する」行為であると考えることができます。企業の収益性は、まずは粗利をうまく獲得することができるか、そして販売・一般管理費を粗利に対して適正なレベルにコントロールできるかに掛かっているということなのです。

計数マネジメントで使用するインデックスは売上高だけでは不十分

これまで、販売部門やマーケティング部門の活動の成果として粗利よりも売上が重視されてきた理由として、商品は売れば儲かるという前提条件があったからではないかと私は考えています。ある商品を始めて販売する際には、その製造原価と売価のバランスは必ず経営側にチェックされているはずです。ところが、現在の日本のようにデフレ環境が長く続くと、価格の下落により販売を開始したころに期待されていた粗利はまったく望めない状態になっているはずです。それにもかかわらず、売上高は、前年対比で維持することがどの企業においても重要視されますから、さらに値引きを行って、販売数量を増やし、売上を維持しようとすることによりさらに粗利を削っていくという悪循環になっている企業が多いのです。

それでは、計数マネジメントを強化する上で何から手をつければよいのでしょうか?それは、販売部門やマーケティング部門の活動を、粗利を獲得することが目的であると定義し直し、売上高と同じようにその重要性を認識して成果を管理していくことです。言い換えれば、マーケティングコストの対価を粗利として考え、売上はそのための手段として考えるということなのです。

自動車の燃費は走行距離をガソリン消費量で割って求められます。販売費がガソリン消費量だとすると、これまで売上高が走行距離に値するものであったと思います。しかし、それでは不十分であり、粗利額を走行距離として燃費を測らなければならないということなのです。

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計数マネジメントはどのように行うべきか

1.ブランド、製品群別などのように活動単位でのP/L(損益計算書)の作成
2.適切なインデックスの導入
3.これらを「見える化」の推進

を行うことが最低条件となります。
しかし、ここまでは情報システムの改修、経理部門、販売管理部門の努力によってなんとか形にはなるはずです。しかし問題は、できあがった仕組みをどうやって使いこなすかにあります。

いきなり、販売部門やマーケティング部門の目標値に粗利金額や粗利÷販売費効率などのインデックスを導入すると、まず間違いなく現場は混乱するでしょう。なぜなら、これらの指標を改善するために何をしなければならないかがすぐには分からないからです。

よって、まずは販売部門やマーケティング部門に専任のコントローラーを配置します。次に、これらの指標と実際の活動を紐付けて観察することにより、どこに無駄があるのか?、逆に機会ロスはないか?といったことを少なくとも半年程度の時間を掛けてリストアップし、活動をどのように改善するべきかを明確にすることから始めるのが長期的に考えると最も良い方法になるでしょう。

最終的には、ブランド、製品群別での粗利金額、粗利÷販売費効率に代表されるインデックスを、月次予算、フォーキャスト、月次決算、ローリング予算に反映させていく必要があります。しかし、計数マネジメントの目的は組織管理ではなく、あくまで利益を最大化するために販売部門やマーケティング部門の活動を最適化することにあります。そのためには、現場を混乱させない、そして担当者の士気を落とさないようにするための配慮が必要だということです。

担当者に徹底的に考えさせることの重要性

言うまでもないことですが利益を最大化するためには、

・高い粗利率の商品の重点的販売
・高い粗利金額が期待できる商品の企画
・販売効率(粗利÷販売費)の改善
・ブランド価値の保護(つまり、価格レベルとシェアの維持・改善)

などの施策が必要となるわけです。

しかし、きっちりとした計数管理ができていなければ、これらの施策を検討するための「ものさし」がないといって過言ではありません。逆に計数の意味するところを担当者レベルまできっちりと理解してもらい、その上で適切な情報開示をすることにより、現場レベルで今何を行うべきかを自発的に考えることができる準備が整うのです。

そして、その上で部門内、部門間を問わず、利益を最大化するためにどうするべきなのかを議論する場を作る、あがってきたアイデアを採用するかどうかの意思決定をすばやく行うしくみを作る、成功例、失敗例を分析してナレッジを蓄積していく。このような地道な努力により組織は非常に強固なものとなります。

世界最強といわれるサッカーチームのFCバルセロナは、世界的な有名選手を大金を費やして獲得するのでなく、カンテラという下部組織を充実させて、だれがやっても同じサッカーができるよう若手選手のうちから養成することに重きを置くと聞きます。経営資源は限られています。担当者にひたすら忙しく働いてもらうのもひとつのやり方ではありますが、計数マネジメントの方法を見直すとともに、考える組織を作りあげることにより、彼らの能力を最大限に引き出すことが経営者とマネジメントに今求められていることなのではないでしょうか?






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コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 國方 康任
所属 リエゾン株式会社 代表取締役
略歴 1964年大阪生まれ。同志社大学工学部卒業後、TDK(株)入社、自動車用磁性材料の研究開発、海外営業、経営企画職として、世界5拠点の事業所統廃合、中国工場の設立、大型設備投資のプランニング、欧州提携企業との契約交渉、海外競合事業の買収交渉などを歴任。その過酷な交渉の中で、会計知識の重要性を肌で実感し、米国公認会計士の資格を取得。2007年より独立し、経営コンサルティングとビジネスパーソン向けの教育サービスを提供している。主なテーマは「新規事業計画立案」、「戦略的財務分析」、「M&A」など。書籍:「直感でわかる企業会計」

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