2011年5月23日(月)UP マーケティング商品開発・ブランド戦略

【連載 マーケティング活動にも収益志向を!】 第1回 マーケティングの本来の目的とは?

売れればよしの時代は終わった

東日本大震災の影響で、みなさまの会社でも収益管理が非常に厳しくなっているのではないかと思います。今年の3月を最終月とする四半期、あるいは会計年度では2月までの貯金があって意外に利益の落ち込みは大きくなかったようです。しかし、4月以降は震災の影響が全て反映されますから、各企業においても無駄な費用は使うな!、在庫は最低限にしろ!、でも売上はもっと上げろ!と半ば無茶苦茶とも言える指示が経営サイドから飛び交っている毎日であるのではないかと想像します。


震災の影響ばかりが話題になる昨今ですが、日本経済は震災が起きる以前から非常に難しい状況にありました。少子高齢化、人口減少、若者の消費離れ、継続的なデフレの進行など、数え上げればきりがありませんね。このような環境においては、売価を積極的に下げる、小売へのインセンティブを大きくする、価格を上げずに商品に付加価値を付ける、などのように利益を犠牲にしてでも売上の減少を少しでも食い止めることが多くの企業にとっての企業戦略とせざるを得ない状況になっていたのではないでしょうか?
しかしながら、無理な過当競争は企業の収益性や財務体質を損ない、その結果として本来競争力を強化するのに必要不可欠なはずの研究開発や人材投資を積極的に行うことさえできなくなる、いわば負のスパイラルに企業を導くことになります。


これまでマーケティング活動、販売活動といえば、顧客のニーズを詳細に把握し、適切にコミュニケーションを取りながら、販売戦略を実行することがその中心であり、「売上を増大させば収益性も同時に改善される」という前提条件のもとにこれらの強化策が検討されて参りました。
しかし、現在のような「パイが縮小する」経営環境下においては、これらに加えて「収益性を最大化する」という経営のそもそもの目的を意識したマーケティング活動、販売活動が非常に重要になっています。
つまりそれは、どのような商品を重点的に商品化し、販売すればよいのか?あるいは販売、マーケティングに掛かるコストの効率性に無駄はないか?といったことを日々の活動において常に考慮されているかどうかということであり、それらが体現できているかどうかが企業の優勝劣敗を決定する要因となってきているのです。「売れればよし」の時代はすでに過去のものとなったことを我々は強く意識しなければなりません。

販管費のコントロールが利益額を決める

次に、利益がどのように創出されているかを考えてみたいと思います。図1は典型的な食品メーカーの損益計算書です。数字は平均的な数字を使っており、企業規模の影響を無くすために、売上を100%として、営業利益がどのように創出されているかを示しています。売上原価つまり製造原価に在庫の調整を加えたものが約55%で、売上から売上原価を引いた売上総利益(粗利)が45%、さらにそこから販売費及び一般管理費が42%引かれて営業利益が3%残るというのが典型的な姿になります。


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もちろん、食品メーカーにもいろいろな業種や企業があり、売上総利益が50%以上ある企業もあれば、20%程度しかない企業もあります。しかし、非常に興味深いことは売上総利益が少なく20%くらいの企業であっても、販売費及び一般管理費を抑制して、わずかでも営業利益を出しているということです。逆に売上総利益が50%以上あるにもかかわらず、かなりの金額の販売費及び一般管理費を使ってしまい営業利益率が10%以内に収まっているケースも多いのです。
つまり、販売費及び一般管理費というのは、かなりのレベルでコントロール可能なものである反面、厳格にコントロールしなければついついいくらでも使ってしまう傾向が強いものであるということなのです。
ですから、一般的な消費財メーカーにおいては、どのように販売費及び一般管理費をコントロールするかが企業の利益額を決定してしまうと言っても過言ではないということになります。

費用のコントロールはどんぶり勘定であってはならない

では、販売費はどのようにコントロールすればよいのでしょうか?

企業の利益を最大化するためには、(A)売上総利益を稼げる良い製品、つまり沢山売れて、粗利率が高い製品を持つこと[高い売上総利益額]と、(B)販売費及び一般管理費が売上総利益に対して適正な割合に抑制されていること[高い費用効率]が必要です。

したがって、これらが現在どのような状況にあるかをブランド別、製品群別に何らかの定量的な指標を持って把握されていなければなりません。
そして、(A)と(B)の指標およびそのブランドや製品群の持つポテンシャルを考慮して、さらに拡販や新製品投入を行うのか?あるいは販売管理費の抑制を行うのかを決定していきます。


もう少し具体的に言いますと、現在のように何もしなければ売上数量が減少する、デフレで単価も下落し売上総利益率も減少するという中で、少しでも売上を増やすためにシェアアップの活動や新市場進出の検討、そして粗利の高い製品へのシフトなど数々のプロジェクトがなされていると思います。
これらにはそれなりのコスト(特に販売費)が掛かるのは当然のことです。これらのコストがより高い利益率を実現するために必要なものであったかどうかは必ず定量的に評価され、今後の活動に活かされていかなければならないということなのです。そこには、売上が下がりそうだから費用を一律何パーセントカットするといった非合理的な考え方は存在しません。

マーケティングの本来の目的とは?

マーケティングの大家、フィリップ・コトラー氏は、「マーケティングの目的は売上を最大化するだけでなく、長期的な利益をも最大化すること。」(「コトラーのマーケティング・コンセプト」東洋経済新報社より引用)と述べています。これには「ブランド価値を最大化せよ。」という意味があると思いますが、単にブランドの認知度やロイヤルティが高いだけでなく、その結果としてのブランドの収益性が客観的に評価され、維持・改善されるしくみが存在していなければなりません。

マーケティング部門、販売部門は顧客との唯一の接点であり、これらの部門が発する情報とアイデアが企業の命運を決めるというのは、いわば当たり前のことでもあります。よって、これらの部門に属する全てのメンバーが「長期的な利益を最大化する」という経営の目的と自らのミッションを今一度認識し、経営者視点を持って活動をしていくことにより、企業は劇的に変化を遂げることが可能となります。

そのためには、以下の5つのポイントに絞って現状を評価し、強化を進めることができると私は考えております。

  1. 計数マネジメント
  2. 戦略思考力
  3. 改善提案力
  4. 情報システム
  5. 教育・コミュニケーション

(1)は事業計画から始まる部門マネジメント、(2)(3)はメンバーの能力開発、(4)は(1)を実現するために最低限必要な情報システム、(5)は社内の風土改革に関するものです。次回以降これら5つのポイントについて話を進めて参ります。(次回、第2回は5月末UP予定です。)

コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 國方 康任
所属 リエゾン株式会社 代表取締役
略歴 1964年大阪生まれ。同志社大学工学部卒業後、TDK(株)入社、自動車用磁性材料の研究開発、海外営業、経営企画職として、世界5拠点の事業所統廃合、中国工場の設立、大型設備投資のプランニング、欧州提携企業との契約交渉、海外競合事業の買収交渉などを歴任。その過酷な交渉の中で、会計知識の重要性を肌で実感し、米国公認会計士の資格を取得。2007年より独立し、経営コンサルティングとビジネスパーソン向けの教育サービスを提供している。主なテーマは「新規事業計画立案」、「戦略的財務分析」、「M&A」など。書籍:「直感でわかる企業会計」

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