2011年5月26日(木)UP 人材育成・組織力強化人材育成

【連載 営業の生産性向上を考える 第3回】ITと効果性向上

Q1.営業部門にも様々なIT投資がされてきましたが、それを見直す企業が増えてきましたね

そうなんです。そもそも何に結び付けるためにIT投資を行うのか?と言うことを根本的に考え始めた企業が多くなってきました。

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これは、収益性の分解式です。「効果性を向上させるためにIT投資を行った結果、収益性が向上している・・・」、というイメージをこの分解式で解説すると、「売上を向上させるためにコストをかけ、固定資産(=資本)を増やした結果、売上が向上し、収益性が向上している」、と言えます。

つまり、効果性向上に関するIT投資が影響を及ぼす要因としては、上記の分解式の内、「売上」に貢献することが望ましい、しかし、実際は売上に貢献するどころか、収益性の悪化のみが顕在化していないしょうか? それでは、IT投資が本末転倒です。

そんな会社がよく使う疑問符が、「結局、今回のIT投資で何が変わったのか? そして、何に結び付いたのか?」。そもそも投資することは目的ではありません。


そこで、質問です。
   �@(事実として)IT投資が売上向上に貢献していますか?
   �A(過程として)IT投資と売上向上を相関させる測定を行っていますか?

この問いに答えることは難しいです。特に�@は大変難しいでしょう。理由は簡単で、売上の向上に確実性は伴わないからです。

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成果を向上させるためには、事実を変えなければならなりません。事実を変えるためには、行動を変えなければなりません。行動を変えるためには、意識を変えなければならなりません。しかし、意識を変えることはなかなか難しいし、また、意識の変化を定量的に測定することも難しいでしょう。

であるならば、行動を変えること、そして行動の変化を測定すること、更に「行動」を対象に何かしらのアクションを起こせば、成果(=結果)に対するインパクトは期待できるのではないでしょうか。

 つまり、「成果の不確実性」のバラツキをできるだけ抑えるためには、「行動の確実性」を高めることによりそれらは解決できるのです。

 また、その「行動」とはKPI(key performance indicator)であり、この「行動」を取ることによって、成果をもたらすことが期待できます。

 このように建設的に考えてみると、ITの導入が個人一人ひとりの「行動」に「どのように影響しているのか?」を観ることが、ITの効果性(=売上)向上への期待を見ることに繋がるはずです。


そこで、再び質問です。
   �BITの導入後、営業現場一人ひとりの行動が変わっていますか?
   �Cその行動変化に関する状況を定量的に測定できていますか?

Q2.ITを導入することが主眼になってしまい、本来の目的を見失っていたような気がしますが・・・。

そうですよ、本来、IT投資の目的は何か?という事なのです。
そもそも、ITはツール(道具)であり、そこには目的があるはずです。例えば、「これまでは日報を紙で提出させていたものを、デジタル化させ、管理を簡素化させたい」、や「数字の進捗管理をデータベース化したい」などでしょう。

ちなみに、これらの目的はこれまでほぼ達成されてきていると思います。しかし、忘れてはいけないことがあります。ITはツールであるからこそ、そこには「投資」という概念が働きます。つまり、企業は予算をわざわざ計上してITツールに投資するのです。決して高い買い物をして満足しているのではありません。

ということは、ITを導入するだけでは「収益性を悪化させているだけ」ということに現場は気づかなければならないのです。ITが何に影響を及ぼしているのか? をシッカリと監査しなければならない、ということですね。

つまり、ITを導入する目的とは、本来
■処理的な業務(前回ご紹介した"S型業務"=処理的業務)をできるだけ簡素化させ、もしくは、手離れさせ、
■そこで創出された経営資源(=時間)を、売上向上に繋がるであろう業務(前回ご紹介した"T型業務"=非定型業務)にシフトさせる
ことが望まれるのではないでしょうか?

例えば、「T型業務"を向上させる」ことが目的であるならば、不確実性の高い売上向上を期待できるのではないでしょうか。

先日、ソフトバンクグループ代表の孫氏が自社内で行った事例をインターネットで発表されていました。 内容は、iPadとiPhoneを組み合わせて活用すると、一人当たり約50分(/D)の時間を新たに創出することが出来、その時間を売上向上に繋がるであろう業務に投入した結果、受注が増え売上が向上した、という内容です。

この事例を私の言葉を借りて解説するならば、iPadとiPhoneを組み合わせて活用することによって、S型業務=処理的業務を効率化させ、そこで創った余力をにT型業務=非定型業務に投入し、最終的には収益性向上に貢献できた、と言えます。
まさに、この事例は、ITの導入が自社の収益性向上に貢献したと言える、最適な事例ではないでしょうか。

このように見てくると、効果性向上を期待しているならば、管理対象としては「不確実性の高い成果目標(例;販売目標、利益目標)ではなく、確実性の高い行動目標を管理する」ことが、原理原則に適っていると言えるのではないでしょうか。

Q3.確かに目的のないIT投資が営業現場に混乱を招いていますね

そうですね。例えば、入力することが目的になってしまっている例はよく見かけます。
つまり「情報を入力することが仕事になっている」、という状況。これでは
■ ITを投資することによって発生したコスト、及び、資産の増加による収益性の悪化だけでなく、
■ 営業人材一人ひとりの経営資源(=時間)をも余計に奪い、収益性を低下させている
ことに繋がりかねないでしょう。

そもそも、人間という動物がなぜイライラするのでしょうか? 人間は機械ではない。だからこそ、同じ作業の繰り返しは飽きてくる。この繰り返しを長期間行っていると、人間としての秩序が崩れる場合があるのです。だからこそ、この手の業務は人間の手から離れさせることが求められます。つまり、これらの対象業務は処理量生産性の向上が期待されている。この業務にはITは多大なる貢献をしてくれるはずです。しかし、「入力することが仕事になっている」のでは、処理量生産性を低下させていることに繋がっている、と言えます。なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?

答えは、「入力(=input)した後のoutput」が不明確であるからです。もしくは、必要とされるoutputではないからです。
逆に考えると、outputがしっかり定義されているからこそ、inputの重要性に気づくものでしょう。例えば、日報一つ取っても「上司からのフィードバックをもって最終outputとする」からこそ、部下は「どんなフィードバックをもらえるのか?」という期待を膨らませて、記入(=入力)するものです。しかし、「部下が入力した内容を最終outputとする(=上司は読むだけ)」ならば、おそらく、入力する作業にイライラが募るでしょう。

意外と、営業現場では忙しさを理由に後者のような実態が散見されていないでしょうか? これは言わば、悪循環や他責の始まりです。目的やそれに伴うoutputが不明確であるならば、結果も不明確になるものです。

コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 坂本 裕司
所属 株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ 代表取締役
略歴 生産性向上マネジメント・コンサルティングの第一人者 。 1996年鐘紡株式会社(現;クラシエHD株式会社)入社。ノッティンガム大学経営大学院(UK)にてMBA修了。ISPI(International Society for Performance Improvement:米国本部:ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体)の日本支部プレジデント(2003〜2011)。独立系マネジメント・コンサルティング会社取締役を経て、株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティを設立。 主な著書:『戦略的営業利益向上マネジメント』、『考える営業』 、『ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント』 (すべて産業能率大学出版部)
セミナー “考える営業組織”のつくり方(7/13開催)
コラム 【連載】 営業の生産性向上を考える



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