2011年5月06日(金)UP 人材育成・組織力強化人材育成

【連載 営業の生産性向上を考える 第2回】営業組織が効率より効果性向上が期待されている理由

Q1.営業組織の生産性を考える上で最初に効果と効率の定義を教えていただけませんでしょうか

一般的に効率性や効果性はInput分のOutputで定義できます。対策の考え方としては大きく3つあります。図を見ながら説明を聞いてください。

  1. 分子が一定で分母を低減する。
  2. 分母が一定で分子を向上させる。
  3. 分母の低減と分子の向上を同時に達成する。

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どの対策を実行しても、生産性は向上している。私は、�@を効率性(efficiency)、�Aを効果性(effectiveness)、そして、�Bを生産性(productivity)、と定義しています。

ドラッガー(Peter Drucker(1973))によれば、Efficiency is doing things right, effectiveness is doing the right things.と定義されていますね。日本語訳すると、
    �@ doing things right;正しく取り組む
    �A doing the right things;正しいことに取り組む

 「効果性の向上」とは、「正しいことに取り組んだ結果向上した内容」を指します。さらに、「正しいことに取り組んだ結果」は、分母の低減(=効率性の向上)ではなく、分子の向上で表わされます。つまり、「効果性の向上」も効率性向上同様に「生産性の向上」に繋がるのです。

Q2.ではなぜ、効率ではなく、効果性の向上が求められているのでしょうか。

ドラッガーの言う「正しい・・・」は、「何が正しいのか?」という議論になりますね。
ここで表現している「正しいこと」とは、「自社にとって正しいこと」であって、「世間一般に正しいこと」ではありません。例えば、世間が「どの会社もSFA(Sales Force Automation)を導入し営業効率を改善し収益性を向上させている」としましょう。この世間の動きに倣って自社も「SFAを導入し収益性を向上させる」ことは「正しいこと」なのか? ということなのです。

「伝言の罠」という考え方があります。ヒトは、直接聞いたことの80%くらいしか理解できておらず、その情報を誰かに伝える段階において、90%くらいしか伝えられないのが実情でしょう。つまり、全体の72%しか伝えきれない。

日本の芸の世界(守・破・離)も同様で、弟子は師匠から技術を盗もうとするが100%完璧には盗むことができない。なぜなら、すべてが形式知ではないからです。しかし、100%に足りない暗黙知を弟子が自分でオリジナルで考えて、「トータル100%」、もしくは、「>100%」にするから、その弟子は師匠を超えた人材になっていくのです。一方で、全てをゼロからオリジナルで開発する必要もありません。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(ビスマルク)。このちょっとした努力(=100%コピーできない事実と、足りない分を補うために知恵を創出する努力)をあなたは怠っていないでしょうか? 知恵のない営業組織は簡単に破たんする、と思います。

例えば、世間が工場に「リーン生産方式」と導入すれば、自社工場もその仕組みを取り入れ、「BSC;balanced score card」が流行れば、自社経営もそのマネジメントを取り入れ、世間が「competence management」と言って人材育成に躍起になれば、自社もそれを取り入れ、・・・・。
果たして他社とどの程度の優位性を生んでいるのでしょうか? 伝言の罠や芸の世界がそうであるように、「決して100%コピー」はできないのです。つまり、「(仕組みを導入しただけでは)決して競争優位性は導けない」ということなのです。
 オリジナルを考える! という行動は決して楽ではありません。しかし、努力の軌跡とは、「決められたことを一生懸命取り組む以上に、オリジナルなことを考え続ける」ことにこそ、価値を見出すべきではないでしょうか。
 だから、企業(=個人)は成長し続けるのです。つまり、効果性向上(分子の向上)は期待し続けなければならないのです。

Q3.効果性を向上させるために先進企業がどのような取組みしているかを教えて下さい。

そうですね。まず、「効率性と効果性をどのように測定するのか?」を考えてみましょう。ここには正しい基準はありません。但し、基準は決めないと決まらない。つまり、成果(=分子)は予めレベル1〜5のように設定しておくことが必要になります。
考え方として、新人が1H投入して導かれた結果がLevel 1に対して、ベテランが1H投入して導かれた結果がLevel 5であった場合、後者の方が生産性が高いことが一目瞭然です。

同時に、これらのLevelのギャップには、その人の経験やスキルなど見えない能力も影響することが予想されます。これらを、「非定型業務」(考える業務)と定義してみましょう。
これとは逆に、人によってさほど成果の差がない業務を定型業務(処理する業務)としてみます。例えば、事務処理をすること自体にはそれほどベテランだから生産性が高いと言うこともないでしょうし、会議に出席する、ということ自体に人による成果の差は生まれません。

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では、非定型業務(考える業務)つまり、「オリジナルなアイデア・知恵」が必要とされる業務量が多ければ多いほど素晴らしい人材なのでしょうか? 
 答えは「No」でです。例えば、業務量全体の内、100%全てを非定型業務(考える業務)で従事していたならば、おそらく、その人材は倒れるでしょう。そもそも、非定型業務とは正しい答えのない業務であるからこそ、成果のLevelは青天井なのです。一方で、人間は機械ではないので集中するにも限界があります。 同時に、定型業務(処理業務)が全くゼロという職種はこの世の中に存在はしません。

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この表は、様々な方々(会社を含む)が提言しておられる非定型業務、すなわち考えて集中する業務(=わくわくする業務)に対する投入時間の内訳です。これにあるように、最大でも全体の30%(ユニ・チャーム)。時間に換算すると約2.4H(/D)。8H全てを非定型的な業務に集中することは人間としては無理なことであることを理解しておきたいです。
一方で、もし「定型業務(処理する業務)=100%」であったならば、人間はどのような感情を抱くでしょうか。自分を振り返ってみて下さい。
答えは「つまらない・・・」でしょう。逆説的に検証しているのですが、定型業務(処理する業務)ばかりでは人間は「いらいら」してくるものなのです。この「いらいら」は人間の秩序を保つためには排除する必要があり、だから、定型業務に対しては「効率性向上活動」が望ましいのです。

GMが破たんした時にToyotaとよく比較されていたが、Toyotaは、(Line workerはKnowledge workerではないが)Line workerにも「考える業務(=非定型業務)」を与えていたことである、と評されていました。小集団活動と称して、Line workerにもアイデア提案業務を課しているのです。つまり、Line workerを機械として扱っていなかったところにToyotaの強さがあるのではないでしょうか。

Q4.最後に非定型業務と定型業務を比較して説明していただけますか。

はい、わかりました。

 定型業務のイメージは簡単でしょうが、非定型業務のイメージは難しいかもしれませんね。なぜなら、「定型されていない(=非)」からでしょう。私は、この非定型業務を「目的・貢献度生産性」対象業務と呼んでいます。


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また、略称として、T型業、S型業務と呼んでいます。

�@目的・貢献度生産性 対象業務
     必要投入時間は、自らが決める業務;Target Time型業務®(T型業務)
�A処理量生産性 対象業務
     必要投入時間は、組織として決まる時間;Standard Time型業務®(S型業務)



第3回「ITと効果性向上」に続きます

コラム筆者紹介

講師紹介

講師イメージ

講師名 坂本 裕司
所属 株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ 代表取締役
略歴 生産性向上マネジメント・コンサルティングの第一人者 。 1996年鐘紡株式会社(現;クラシエHD株式会社)入社。ノッティンガム大学経営大学院(UK)にてMBA修了。ISPI(International Society for Performance Improvement:米国本部:ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体)の日本支部プレジデント(2003〜2011)。独立系マネジメント・コンサルティング会社取締役を経て、株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティを設立。 主な著書:『戦略的営業利益向上マネジメント』、『考える営業』 、『ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント』 (すべて産業能率大学出版部)
セミナー “考える営業組織”のつくり方(7/13開催)
コラム 【連載】 営業の生産性向上を考える



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